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Super-Frog Saves Tokyo

        But for one man, the struggle is deeper

                by Haruki Murakami
                Translated by Jay Rubin

June - July, 2013

かえるくん、東京を救う


片桐は40歳。新宿の金融機関の融資管理課に勤めるうだつのあがらぬサラリーマンである。
ある日帰宅すると部屋に2メートル以上の背丈のあるかえる(かえるくん)が待っていた。
驚く片桐にかえるくんは迫り来る東京の壊滅を自分と協力して救って欲しいという。
とてつもない話に片桐は混乱するが次第にかえるくんの話に引き込まれていく。

かえるくんによると3日後の2月18日の朝8時半に神戸大地震より更に大きい地震が東京を襲う。東京は壊滅状態になり15万人の死者が出る。しかも震源地はなんと歌舞伎町の片桐の会社の地下でそこに住む巨大なみみずくんが直下型巨大地震をを起こすのだという。片桐と協力してこれを阻止するというのだ。
片桐はみみずくんという話にさらに困惑する。

片桐は16年間東京安全信用金庫新宿支店で融資管理課ひとすじに働いてきた。
返済金、焦げ付き金の取立て、無意味になった担保から少しでも金をもぎとる事が仕事であった。歌舞伎町はヤクザ、暴力団、マフィア、銃と麻薬が溢れる悪の巣窟である。そんな街で片桐は時にはヤクザに殺すと脅されたこともある。
独身で両親はすでに無く弟妹を大学まで出し結婚もさせた。自分が殺されても誰も困らない。そいう思いが片桐を妙に平然とさせその世界で肝の据わった男と思われていた。そんな片桐でもみみずくんという話には平然と出来ないのである。

みみずくんは地下で長い眠りについているらしいが、音や震えを吸収、蓄積する。
それがある日怒りに変わり爆発する。そして先の神戸大地震に刺激され今行動を起こそうとしている。かえるくんはみみずくんに特に反感、敵対心を持っはていないしある意味世界にとってあってもかまわない存在と思っている。
しかし今はこの危険を放置出来ないから”戦う”というのだ。
片桐は何の取り得も無い自分をパートナーに選んだ理由を聞く。

今まで地道に危険な仕事をしてきた片桐を上司や同僚は正当評価していない。
弟妹は感謝するどころか恩知らずな事すらしているが腹も立てない。
そんな片桐こそ筋道の通った勇気のある人で一緒に戦うのにふさわしい人だという。
尚も躊躇する片桐は後ろから励まし、応援してくれる事が必要だという。
自分も平和主義者で戦いは好まないがニーチェもいう様に最高の善なる悟性は恐怖をもたぬ事だから自分は戦う。片桐はまっすぐな勇気を分け与えてくれれば良いのだと説得する。片桐はこの非現実的な話を何故か信用してよい気になる。
更に今トラブルの渦中の融資焦げ付きの件を解決をして片桐を信用させるという。
半信半疑の片桐だったが翌日その件が解決した事を知る。かえるくんはジョゼフコンラッドの言葉を引用して想像力に対して抱く恐怖、精神的恐怖を与えて巧くやったのだという。尚も気の進まぬ片桐にこれは責任と名誉の問題で誰にも知られず評価もされないけれど戦うしかないのだという。
当日の手順の説明が始まるがその機におよんでまだ怖気ずく片桐に一人で戦いに勝つことはアンナカレーニナが驀進してくる機関車に勝てる確率より少ないが一人で戦うと言い切る。そして片桐は決して逃げないだろうとも言う。


ところが2月17日午前7時に片桐は新宿の路上で銃で狙撃され病院に搬送される。
看護婦からと今日が2月18日の朝9時15分で大地震など起こらなかった事を知る。
外傷等なく路上で昏倒して運ばれ昨日は一晩中かえるくんを呼んでいたという。
片桐は一連の出来事が白日夢だったのかと混乱するがその夜疲れきったかえるくんがやってくる。約束を果たせなかった侘びをする片桐に夢の中で助けてくれたので最後までみみずくんと戦いぬくことが出来たという。いぶかる片桐に激しい戦いは全て想像力の中で行われ勝負をするが人間は限りある存在だから敗れ去る。
ヘミングウェイの言うように人生の勝ち方で無く敗れ方に最終的価値があると言い片桐の照らす充電器の光輪のなかでみみずくんと戦い何とか地震を阻止し引き分けにもちこんだと言う。戦いのさなかあの白夜に描かれた神に見捨てられた人のことを思い出したとも言う、そして自分はかえるくんであると同時に非かえるくんの世界を表象している。目に見えるものが本当のものとは限らず自分の敵は自分の中にいると言い混濁したかえるくんは”機関車が来る〜”と言って昏睡状態に陥る。
その内、傷だらけのかえるくんの身体から沢山の瘤が盛り上がり破れ悪臭のする液とともに無数の蟲が出てきて病室を覆い尽くし片桐の身体にまで入ってくる。

片桐の悲鳴で看護婦が明かりをつけるがそこには汗をびっしょりかいた片桐が寝ているだけでまた悪い夢を見たと言われる。片桐は夢と現実の境が分らなくなりあのかえるくんの”目に見えるものが本当のものとはかぎらない”と言う言葉を自分自身に言い聞かせる。かえるくんが一人で東京を大地震から救ったのだ。
その代わりかえるくんは損なわれ失われもう帰ってこない。”機関車〜”とうわごとのように言い片桐は眠りに落ちていくのだった。

コメント
かえるくんは文学愛好家、特にロシア文学愛好家らしくアンナカレーニナ、白夜が出てきます。
☆さんがコメントして下さった様にアンナカレー二ナの中で機関車は 彼女の人生の節目ごとに出てきて運命を暗示しています。
何回か出てくる機関車は戦いに挑んだかえるくんの逆らえぬ運命を表しています。
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