Blood Work by Michael Connelly

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October 9, 2008
第45章 あらすじ
 マッケイレブは村に戻り、クリミンズの隠れ家探しに奔走する。 丘の向こう側にあるトレーラーハウスを見つけたのは、太陽が地平線に沈んだ後だった。 ハウスの中から電話の呼び出し音が聞こえる。 それは宿の従業員から奪ったクリミンズの電話番号にかけた際、誰も出ないのに腹が立って受話器をはずしたままにしてある通話に違いなかった。 中に入り、グラシエラとレイモンドの名を呼ぶが答えはない。

 収納庫も空であることを確認した後、近くで足跡を発見する。たどっていくと建物はなく、むき出しになったコンクリートの基礎部分があった。 トイレができるはずだった所からパイプが突き出ているのを見た瞬間、地中に埋められた浄化槽に二人がいると閃いた。

 浄化槽のふたを開けると、怯えた二人があらわれる。 マッケイレブは泣いているグラシエラを抱きしめ、"It's over now"と繰り返した。
第46章 あらすじ
 マッケイレブがボートのボルト締めに奮闘していると、ジェイ・ウィンストンがメキシコでクリミンズの死体が発見されたことを伝えにきた。 コンピューターに遺書も残されており、現地の警察は自殺と考えていると言う。 彼女は遺留品や指紋を調べるため、現地に向う途中だった。

 自殺という点に疑問を抱くジェイは、マッケイレブにラスヴェガスでの休暇はどうだったかと尋ねる。 どこにも行かずボート修理に専念していたと答えるマッケイレブ。 彼の車がひどく汚れているのを見ていたジェイは、彼の嘘を見抜く。

 立ち去る前、ためらいがちに洗車を勧めるジェイ。 二人はしばらく見つめ合う。 マッケイレブはジェイの思いを汲み、感謝の言葉を述べる。
第47章 あらすじ
 マッケイレブとグラシエラ、レイモンドはカタリナ島に向うボートの上にいる。 グラシエラとレイモンドには、静かに心を癒す時間が必要だというマッケイレブの考えに、グラシエラも同意した。

 この旅は、マッケイレブとグラシエラの間にある辛い過去、特にグロリアの死を克服できるかどうかのテストでもあった。 決して簡単なテストではないが、待ち望んでいた機会を与えられたマッケイレブは、久しぶりに自分の人生に目的ができたように感じていた。

 また、彼はこのところ信仰に似た想いを感じるようになってきた。それが自分をどこに連れて行くのかを考えると戸惑いをおぼえたが、心配はしてなかった。 グラシエラを心から信頼していた。 彼女を見つめながら、これから自分が拠って立つ岩を見つめていることをマッケイレブは確信していた。
コメント
長い間、マッケイレブは無神論者でした。 けれど最初から信仰がなかったわけではなく、FBIの分析官として日々残虐な事件と直面していくうちに「信仰の蓄えを少しずつ削っていき、ついには、唯一絶対だと信じることは、人間の邪な行為に限りがないこと(18章)」、という心情に至らざるを得なかったのです。 それでも彼はニヒリズムに陥ることなく使命に従い、悪と戦い続けることに人生の意義を見出していました。

しかし、心臓を病んだ後はその意義も失い、新しい心臓を得た後も、ただ生きているだけの毎日に満たされない思いを抱えていたのです。 グラシエラが現れたのはそんな時期でした。 その後紆余曲折がありましたが、最終的に、彼女が再び意義ある人生を送るチャンスを、彼に与えてくれたのです。 究極の試練を乗り越えて結ばれようとしている二人、分かち合う痛みが深い分、その絆はより揺るぎないものとなるに違いありません。

最後に3人が向かうカタリナ島は、マッケイレブが生まれ育った美しい島です。http://cache.virtualtourist.com/2860670-Harbor_View-Santa_Catalina_Island.jpg 釣りのメッカとしても有名なようです。 母親と二人暮らしだったレイモンドが、今後マッケイレブから色々と学んでいく中で、真っ先に習得するのが魚釣りの技術でしょう。

主人公は勿論ですが、脇役陣も魅力的でした。 推理小説とハーモニカがトレードマークのバディ、マッケイレブに振り回されながらも協力を惜しまなかったジェイ、誰よりマッケイレブの体を気遣っていたボニー・フォックス。 その他、弾道データを調べてくれたFBIの友人など、皆それぞれに味がありました。

メキシコのビーチでのクライマックスは圧巻でしたが、それ以外にも印象に残るシーンとして、例えば、マッケイレブがグラシエラの質問に答えて、船室に貼ってある少女の写真にまつわる事件を語る場面、それに、グラシエラがマッケイレブを医学生に仕立て上げ、勤務先の病院のPCで不正アクセスを試みる場面などがあります。 特に後者の場面では、グラシエラがイニシアティブを握っていました。 この力関係、なんとなく今後の二人の関係を想像させるような気がするのは私だけでしょうか。

何はともあれ、これから3人が仲睦まじく暮らしていくことを祈りつつ、最後のコメントを終えたいと思います。 最後まで一緒に読み進んでくれた皆さん、どうもありがとうございました。
Septemer 25, October 9, 2008
第44章 あらすじ
 逃亡したヌーンことクリミンズを追跡して、マッケイレブは彼が催眠セッションでこの世で最もリラックス出来ると言った場所と思われる所に2日かけてたどり着いた。嘘をつく一番良い方法は出来るだけ本当の事を言う事だと知っていたので、ロスアンゼルスの南、多分メキシコで馬が歩いている張り出した岩のある美しいビーチを丹念に探して見つけることが出来た。

 ビーチには人影がなかったので取り合えず海岸沿いのモテルにチェックインし、用心の為SIGザウエル銃を机の上に置いて昼寝することとした。夢で目を覚ましてみると銃がなくなっており、レイモンドに買ってやったのと同じ釣竿がおいてあり明らかに誰かが部屋に入ったようだ。クリミンズに違いない。クリミンズに弟だと騙されて鍵を貸したモテルのカウンターの男を締め上げたが何も分らず、ビーチに飛び出したマッケイレブはSIGザウエル銃を持ったクリミンズを岩の間に発見した。

 クリミンズはグラシエラとレイモンドの居場所を尋ねるマッケイレブに対し、暗い穴の中という以外答えず、取り替える心臓を用意して命を助けてやった事に感謝しここは見過ごして黙って出て行かせろと言う。

 マッケイレブはクリミンズの銃には弾倉にはフルに弾が入っているがチャンバーには一発も装填されていないとひらめき、一切の禍根を断つため、連続殺人鬼クリミンズがマッケイレブのボートに隠していったP−7銃でクリミンズを撃ち、クリミンズの持っていたSIGザウエル銃を取り上げて、指紋をぬぐったP−7銃をクリミンズの近くに置いた。

 クリミンズの最後の言葉は「二人は死ぬ、あんたのせいだ」「俺があんたに命を与えてやったんだ」マッケイレブは「違う、俺はお前の命と引き換えに俺を救ったんだ。俺は自分を救ったんだよ」
コメント
 いよいよマッケイレブとクリミンズの最後の対決で一つ一つのやり取りが意味深くあらすじでは全く不十分だと思う。
 クリミンズの逃亡先を探り当てた推理、クリミンズの銃に弾が装填されていないと感じたひらめき、2丁の銃をすり替えた周到さ等引退したとは言え元FBIの敏腕捜査官の冴えは見事。この調子で拉致されている二人も救出できることを期待。
Septemer 11,25, 2008
第42章 あらすじ
 マッケイレブは、グラシェラに話すことがあると言った。君の妹は、自分のせいで、自分のエゴが狂人のエゴに挑んだせいで、グロリアは死んだ。グラシェラは、おだやかにうながした。

 話し終わった時、グラシェラは、波を拭い、今は出て行って欲しい。ひとりになる必要があると言う。
マッケイレブは、彼女に触れたいという衝動と抗い、グラシェラと別れる。額に入った、グロリアの写真を見て、ずっと昔の幸せだった時の笑顔が一生自分につきまとうだろうと分かった。 
第43章 あらすじ
 マッケイレブは、暗くて深い海に引きずり込まれる夢を見た。朝、バイタルを調べて、正常なことを確認すると、ウィンストンに電話した。
正式な供述書を取りたいかどうかと、何時車を返してもらえるかを確かめた。

 その後、バディのボートに行き、車の引き取りのため、保安官事務所までもう一回移動してくれるよう頼んだ。向かっている時、車の中で、バディにこれまでのことを全て説明した。バディは、運転中、TVで放送されたり、本になるんじゃないかなどと質問しどうしだった。
 マッケイレブは、バンクオブアメリカの支店に寄り、1,000ドルの小切手を現金化して、これまで車を使わせてくれたことと、今日ここまで乗せて来てくれたお礼と、2、3日留守にする間ボートを見張っていて欲しいと言って、250ドルをロックリッジに渡した。

 保安官事務所に着くと、ウィンストンは待ちかねていて、ずいぶん遅いと言う。自分の仕事を終わらせると、供述書を取るために、取調室に行き、昨夜分かったことを話した。
 蛍光灯から指紋が見つかり、該当者があった。コード・キラーのプロファイリングにピッタリだった。彼は、ロス市警のポリスアカデミーを落第した人間だった。権威コンプレックスで、アカデミーからの追放で、精神的破綻をきたし、自分を無能とみなした組織に自分の賢さや価値を示していたのだ。
 3年前にコードキラーのプロファイリングをした時、免職警官やアカデミーの落伍者を優先的に尋問すべきと提言し、クリミンズも尋問されていた。その尋問は、最後のコードキラーの殺人の4週間後だった。マッケイレブは、自分の指示が殺人を止めさせたと考えるとぞくぞくするような満足感を覚えた。ウィンストンがファイルを開いてマッケイレブに渡したクリミンズの写真は、アカデミーの制服を着て、希望に満ちた目つきをしており、その写真を撮られた時、自分は成功を収められないことを、卒業写真は撮られない事を知っているかのようだった。写真を見て、マッケイレブとウィンストンは、眼鏡と頬に何か含んで頬をふっくらさせる程度で、あまり目立つ返送はしていなかったことに気づいた。
 マッケイレブは、ウィンストンに写真を持っていて良いかを尋ね、他に分かったことがあるかどうか尋ねた。インターネット上のホームページへのアクセスは、匿名のプロバイダを通じて行われているため、たどることが出来なかった。

 タイムズのケイシャに犯人が送った手紙がマッケイレブについての記事を書くきっかけになったかも知れないと、昨夜マッケイレブが話したことについてウィンストンと話しているとき、マッケイレブは、グラシェラも、グローリーと一緒に働いたという男性から電話があり、図書館に行ってその記事を読みに行ったことを思い出し、その男が計画を実行しようとしていたクリミンズであるという可能性が高いということに思い当たった。
 マッケイレブは、自分の勘については、ウィンストンにはまだ話さないことにした。

 1時間後、マッケイレブは供述を終えて、取調室に一人で居た。ウィンストンは、テープルの電話を使っても良いと告げ、マッケイレブはしばらく考えをまとめてから、ホーリークロス病院のERナース・ステーションに電話すると、グラシェラは来ていないと言う。自宅の電話にかけると留守番電話が応対した。マッケイレブはつかえながらも何とかメッセージを残した。電話を切ってからも、今のメッセージを録音しなおすことが出来れば良いのにと後悔しながらも、首を振り、部屋を出た。
August 28, 2008
第40章 あらすじ
 ヌーンが記した住所は工業地帯に位置し、ずらりと並んだ小ぶりの倉庫のうちの一つだった。月も星もない漆黒の闇の中、車のヘッドライトを頼りに、マッケイレブは倉庫の鍵をこじ開け、中に入る。 人の気配は感じられず仕事と生活に必要な最低限の家具だけが置かれている。よどんだ空気の中、つけっぱなしのコンピューターのモニターにはさまざまな数字が漂うスクリーンセイバーが光を放っていた。 

 コンピューターデスクに座ったマッケイレブは、引出しを開け、グロリアの名前がついたファイルを見つける。 中には様々な機会に撮られた彼女の写真とともに、彼女の日常の行動が細かく記載された書類が収められていた。 引き続きコーデル、ケニヨンのファイルを発見。 最早、中を確かめるまでもなく、マッケイレブは “It was you”(やはりお前の仕業だった)とつぶやく。そして目の前のコンピューターに目をやり、自分がここにくることが予想されていたことに気づく。促されるように、ある数列 − 彼にとって忘れえぬ暗号(code) − をパスワード欄に打ち込む。“コード(CODE)”と記されたファイルから、“McCaleb.doc”と記されたドキュメントに辿りつくと、そこには犯人からの背筋が凍りつくようなメッセージが残されていた。殺人の動機は自分に対するねじ曲がった復讐心であり、グロリアの心臓はヌーンからのヴァレンタインのプレゼント。 そして、まずマッケイレブを容疑者に仕立て警察に追わせ、真相が明らかになった後も、苦悩のうちに生きながらえさせる、という狂気に満ちた企みがつづられていた。

 マッケイレブは両手で自分の胸をかき抱きながら、悪寒に身を震わせ、苦悶の声を洩らすと、前のめりになって沈みこんでいった。
第41章 あらすじ
 マッケイレブの残した留守電を聞いたジェイ・ウィンストンが到着。 マッケイブは、3人を殺害したのはヌーンであり、ヌーンの正体は通称 “コード・キラー”という、かつて自分が手がけた未解決事件の犯人だと告げた。 

 急な展開に頭が付いていかないジェイに、まず催眠セッションのビデオからヌーンが真犯人であると分かった顛末を話す。 そして、彼のコンピューターのパスワードが、以前コード・キラーが送りつけてきたメッセージに書かれていた暗号(code)と同じもので、すべての数字が使われていたが1(one)だけはなく、「1は無い」(no one)は、ヌーン(Noone)の名前のつづりになる。 またno one(誰でもない)とダブルミニングで、ヌーンはコード・キラーが作り上げた架空の人物であることを表していると説明した。

 2時間後、現場には多くの刑事や技師が集まっていた。 所轄の刑事アランゴとFBIの担当捜査官、ネヴィンズとウーリッグがマッケイレブのもとにやってきて謝罪の言葉を述べた後、事件の経緯を尋ねた。

 マッケイレブは、自分がスポークスマン役を果たした連続殺人事件のせいで、犯人であるコード・キラーから嫌がらせの手紙を送り付けられるなど執拗に憎まれていたこと。 自分が心臓移植待ちであることを知った犯人が、捻じれた達成感を得るために今回の事件を仕組んだことを説明する。  
そして、警察の捜査がお粗末だったせいで、犯人は一連の計画を始動させたとアランゴを責めた。 まずは新聞社に心臓移植の記事を書かせて、グラシエラをマッケイレブのもとに行かせ、マッケイレブのボートに、犯人しか持ち得ない証拠の品とピストルを置く。 「血を調べろ」と警察にタレこみの電話を入れるなど、犯人は常にマッケイレブを監視し、警察を手玉にとっていたのだ。

 別れ際、マッケイレブはアランゴの無能さをからかうことで、かすかであるが溜飲を下げた。

 次にジェイのところに行って、これまでの礼を述べる。 犯人の指紋が一つも残っていないと嘆く彼女に、催眠セッション中に、部屋を暗くするためにはずした蛍光灯に犯人の指紋が残っているはずだと教えた。

 ジェイに別れを告げ、マッケイレブはグラシエラの家に車を走らせた。
コメント
今回でヌーンの正体が明かされました。彼は、マッケイレブが依然かかわった未解決事件の犯人なのですが、その事件について触れられているのが22章とだいぶ前なので、ほとんど忘れていました。 それで、なぜ犯人のメッセージを読んだだけで、ヌーン=コード・キラーと断定できたのか、どうも腑に落ちない思いでしたが、読み返して見るとかなりしっかりと伏線が張ってありました。 (P256の下から5行目 〜 P258の半ば)
HPのあらすじでは「殺人現場にコード(暗号)ともとれる数列を残す”コード・キラー”は、権威に対してコンプレックスを抱き、権威を出し抜いて一泡吹かせることに快感を感じる連続殺人犯の一人であった。 いまだ野放しの犯人は、自分に対し個人的に怒りを感じているとマッケイレブは語った。」とちょうど自分が書いた箇所(!)でした。

昼食の際、話題にでたパスワードの数列も、P257の5行目でマッケイレブが暗唱していました。
スクリーンセイバーの漂う数字が、コードそのものだったのか、ただ思い出すきっかけになってだけなのか、本にははっきり書いてありませんが、引出しのファイルを見ただけでヌーン=コード・キラーと連想できた可能性は低いと思うので、私はコードだったのではないかと推測します。

かなり衝撃的な内容の章で、読んでいるこちらも沈痛な面持ちになりますが、そんな中でもマッケイレブが単細胞アランゴをからかってguilty pleasureを感じる場面、朋友ジェイとの会話場面に多少救われる思いでした。
July 24, August 14, 2008
第38章 あらすじ
翌朝、グラシエラとレイモンドが出かけてから、マッケイレブは、持ち歩いているバッグから資料一式を取り出し、もう一度調べ始めた。被害者たちに共通する血液型という新しい手がかりが得られた今、何か見つかるはずとの信念のもと、夕方まで集中して調べたが、解決は見えてこない。
ジェイ・ウィンストンにも、うかつに電話できない状況になってしまっていたが、彼女のほうから連絡を求めてきた。しかし彼女が勧めるのは、出頭してすべてを警察に話すようにということだった。
グローリアの臓器提供先リストも一つ一つ綿密に調べたが、誰一人あやしげな者は浮かばず、手がかりもないという。自分も付き添って捜査官たちを説得するから出頭するように、とジェイは強く促すが、マッケイレブはその気になれない。自分の運命を他人に委ねるのでなく、あくまでも自分自身を恃みたいマッケイレブ。ジェイの意見とは平行線をたどるばかりだ。
しかしその時、ジェイがふと思いついて口にした言葉は、マッケイレブも目から鱗だった。
「実際に臓器を入手する目的でなく、ただ、リストの順番を上に押し上げるという目的だったら?」
グローリアの死によって、その臓器移植を直接自分が受けることは出来なくても、リストの誰かが移植済みとなれば、それだけ自分の順番が上にあがるわけだ。
もし犯人がそれを狙っているならば、まだこれからも血液型の適合するドナーが殺される可能性がある。
ジェイは、もう一度、BOPRAの移植待ちリストを調べなおすと言い、さらに、マッケイレブに良い弁護士を紹介するというが、マッケイレブは、自分は何も違法なことをしていないので、弁護士の必要は無いと言って電話を切る。
第39章 あらすじ
マッケイレブは続いて医師のボニー・フォックスに電話をするが、移植手術中ということで連絡が取れない。
マッケイレブは、前にボニーと移植手術について話したことや、ジェイの勧める弁護士のことなどを、漠然と考えながら、手元にあったビデオテープを、とくに選ばず機械に入れた。
再生されたテープは、コーデル事件の目撃者、ジェイムズ・ヌーンの催眠捜査の録画だった。
もう一度録画で催眠捜査のセッションを追ったマッケイレブは、ヌーンがあまりにもはっきりと詳しいことまで記憶していることを不審に思い、巻き戻したり進めたりしながら、録画をチェックしてみる。
催眠捜査の終了間近の場面。マッケイレブは、ヌーンに聞くべき質問をし尽くしたので、傍らにいたジェイに向かって「他に聞きたいことは?」というつもりで"Anything else?"と聞き、さらに"You sure?"と確認する。
ジェイは、部外者は介入してはならないという催眠捜査のルールに従い、声を出さずに首を振った。
だがしかし、催眠術にかかっていたヌーンなら、これらの質問が自分に向けられたものと思い、ここで何か答えるのが当然だったはずだ! ヌーンが当然のように何も声を出さなかったということは、彼は最初から、催眠術にかかったふりをしていたのだ。ということは、・・・
マッケイレブは、催眠捜査のテープと、グローリアが撃たれた事件現場のテープをつかみ、VGCのトニー・バンクスのところに駆けつける。
時刻対比表の矛盾から、すでにテープに写っている「良きサマリア人」が犯人であることがわかっているが、この「サマリア人」と、催眠捜査を受けているジェイムズ・ヌーンの画像を、細かく照らし合わせてみると、いろいろな変装で別人のように見せかけているけれども、鼻梁の曲線や、手の小さな傷跡などから、良きサマリア人=ヌーンであることが判明した!
マッケイレブはこの大発見について、ジェイから聞いていた個人電話番号の留守電にメッセージを残し、ヌーンの家に向かう。
コメント
いよいよ解決に向けて物語が動き始めました。
38・39章は、あらすじを追うだけで非常にexcitingで、コメントの出る余裕もなさそうです。
ちょっと面白いと思った表現を拾ってみました。

◇何度も出てくるのが、"curse out loud"という表現。
マッケイレブが何かうまく行かない時によくやります。具体的には"shit!""damn!"などと口走ることのようですね。

◇ジェイとマッケイレブが、臓器移植者リストについて話し合うところで
"anybody with the juice to do this"
とジェイが言っていますが、"juice"には、「動力源」「奮起させる力」などの意味もあるようです。動詞の "juice up"は、「燃料を補給する」「活性化・パワーアップさせる」さらに「筋肉増強剤を使う」などの意味も。

◇"move up on", "knock off", それぞれ "the list"の前にもってくると、「リストの上のほうに移動させる」「リストから削除する」という意味になるんですね。

◇ボニー・フォックス医師の受付係が、"the frowner" と呼ばれていますが、いつも「額にしわを寄せて」難しい顔をしている受付係なのでしょうか?

◇マッケイレブが、いろいろ気にかかる問題を考えるのをいったんやめて、気持ちを切り替えようとする場面で
He finally managed to shoehorn the anxiety into a side compartment of his brain ...
と書かれていますが、shoehornというのは「靴べら」のこと。靴べらの先で、何かを狭い所に押し込むというイメージで、単に「片付ける」あるいは「押しやる」などよりも、具体的で感じが出ていると思いました。
July 10, 2008
第37章 あらすじ
 マッケイレブはチェロキーを走らせ、グラシエラの家の前で車を止めた。彼女にFBIから犯人扱いされていること、自分のボートから証拠の品が見つかったことを告げた。グラシエラは犯人は別にいると激しく怒る。そして彼のために泊まってくれるように頼む。
コメント
自分が追われる身になったことを正直に話したいと彼女をたずねたマッケイレブ。
グラシエラがそれでもじぶんを信頼してくれるかどうか半信半疑だったからだ。彼女に会って確信を持てた。自分を支えてくれるのは彼女しかいないことをその夜あらためて感じることができた。この章はすこしホっとできるところだ。
第36章 あらすじ
 マッケイレブはウィンストンに自説を語り始める。
 犯人はBOPRAコンピューターにアクセスしそのリストの中に、ドナルド・ケニヨンの見つけ監視した。そしてケニヨンが毎朝20分間だけ家に独りきりになることをつかんだ。
 移植用の臓器を確保するため、彼の妻の帰宅に合わせて犯行を行ったが、デヴァステイタ弾を使ったために脳の機能を停止させてしまい失敗に終わる。
彼女はマッケイレブの話に引き込まれ自分からパズルを解いていく。
犯人はBOPRAリストから次にコーデルを狙い銃弾も硬い弾に変更して犯行を行った。偶然現れたヌーンが警察に通報する際に住所を誤り、コーデルは到着時死亡に終わる。
 またしても失敗した犯人はリストに戻り、次のトーレスを選んだ。今回は発砲事件を起こす前に通報する手段をとり、ついに成功させた。

 ウィンストンは臓器の行方を調べる必要があることに気づくが、マッケイレブはそのリストもすでにBOPRAから手に入れており、それを彼女に渡した。その中にトーレスを殺した犯人の名前がある。彼女は事件を解決する大きな鍵を手に入れた。

 FBI捜査陣はマッケイレブを逮捕しようとしている。ウィンストンは「心臓が欲しくてマッケイレブがトーレスを殺したとたれ込みがあったこと、唯一の目撃者であるヌーンに催眠術をかけ裁判の証人を失わせたこと, 犯人と同じチェロキーに乗っていること、それにボートの引き出しから証拠の品が見つかったこと」がFBIの見方だと彼に話した。そして彼女を除きFBIの連中は新聞の見出しまで目に浮かべてふんぞり返っていると告げた。

 マッケイレブは荷造りをしてボートを去った。
コメント
犯人(つまり、よきサマリア人だが)は実に巧妙な手を使いマッケイレブを犯人に仕立て上げようとした。血液型リストから次々と犯行を重ねたため、捜査の目をそらすために心臓移植を待っていたマッケイレブに目をつけ身辺を調査して彼の犯行と見せかけ垂れ込み電話をかけたに違いないとマッケイレブは考えるが、真犯人の狙いは一体何か? マッケイレブを窮地に陥れようとする理由は?
June 24, 2008
第35章 あらすじ
 McCalebは数日分の衣服と薬を手に入れるため危険を承知でボートに戻る。急いで作業をしているとそこにはJayeが待っていた。彼女はMcCalebが薬を求めて戻ってくる予想していた。そして彼女の口から衝撃的な事実が告げられた。

 まず、捜査官たちは彼のボートからCIのロゴのついた帽子を見つけた。これはJames Nooneがチェロキーの運転手が被っていた帽子について証言していたものと一致していた。そして、チャートテーブルのそこに貼り付けられていたもの・・・。McCalebはすぐにそれが何なのか予想がついた。ジップロックタイプの袋の中からGloria Torresから奪い取った十字架のイヤリング、James Codellの車から盗まれた家族写真、しかしMcCalebも予想できなかったものがもうひとつ、Donald Kenyonの$マークの形をしたカフスリングも含まれていた。これらは全て昨夜の侵入者が故意に残していったものだった。

 McCalebは発砲犯をもう一歩のところまで突きとめていることを説明するチャンスをもらうのだった。Jayeに例のVTR見せながら良きサマリア人が発砲犯であること、奴は犯行が行われる34秒前に中央指令センターに既に通報していたことを説明した。
コメント
侵入者はMcCalebを犯人に仕立てようと証拠の品々をボートに残していった。間抜けな捜査官ご一行は彼を追ってメキシコだとか。こんな連中にコードキラー逮捕など到底及ばないのは明白だ。Jayeには何とか理解してもらえた。また一歩真実へと近づいていく。
第34章 あらすじ
 逃亡することも視野に入れたMcCalebJayeだがすぐこの事態に対峙することを決心する。新しい心臓のためには計画的な治療が必要だったし、またGracielaとRaymondと別れることは避けたかった。

 Tony Banksからテープとハードコピーを受け取ると、シャーマン・マーケットに向かった。そのテープに映っていたKangの腕時計を求め彼の妻に会うつもりだった。店には妻の代わりに息子のSteve Kangが店番をしていた。父親の
狙撃犯を探しているので協力して欲しいと頼むが、母親は十分苦しんでいるためそっとしておいて欲しいとそっけない。しかしそれでも、監視ビデオに映っていたKangの時計から銃を持って入ってきた男の時刻を割り出したいと説明するのだった。長々と説明した後Steveは納得し母がいる家へと案内した。

 Kangの腕時計は事件当時から何も変えていないことがわかった。すぐさまMcCalebはLAの中央指令センターへ電話をした。そこの時計からあの事件の公式時間が定められたからだった。Arrangoの名を語りオペレーターから時間を確認する。腕時計の時刻は午後5時14分42秒、オペレーターは17時14分38秒と告げた。その差4秒、Kangの時計は中央指令センターの時計より4秒進んでいることが判明したのだった。
コメント
事件と対峙することで生きる道を選択したMcCaleb、そうさせたのはGracielaとRaymondの存在だったのだろう。彼らの存在を確かなものにする前に解決せねばならない難問、しかし解決の糸口はつかめた、様々なものがじらすように核心へと進んでゆく。
June 12, 2008
第33章 あらすじ
 グラシエラと別れたマッケイレブはタクシーでボートに帰ろうとしたが、タクシーが1台もいなかったのでロックリッジに迎に来てくれるよう電話した。お蔭で彼はボートにFBIと警察が捜索に来ていることを知った。
 自分のボートに電話をしてどうやら捜査が本格的らしいことが分ったので、すぐロックリッジにランドリーに行くように偽装して出てくるように指示した。

 ロックリッジの車に乗ってから、マッケイレブはロックリッジが頼んでおいた船殻の調査で水中にぶら下げて隠してあったH&K-P7の銃を発見し取り除いておいたことを知り、昨夜の侵入者が仕掛けた罠に震え上がった。
コメント
ボートへの侵入者を追払った時、サロンのカーペットが濡れているのに気付いてすぐロックリッジに船殻の調査をさせたマッケイレブの捜査の勘が、殺人事件の凶器を彼の船で警察に発見されるという危機を救った。それに病院の前に一台もタクシーがいなかったのもラッキーだった。
第32章 あらすじ
  エレベーターを降りると、マッケイレブは、自分はタクシーを拾ってボートに帰るので、グラシェラに自分の車で家に帰るように勧めた。
 マッケイレブは、(臓器移植先の)リストのコピーをグラシェラに渡し、自分はボートに戻り、そのリストを検討するつもりだと言う。グラシェラは手を貸したいと言うが、今は、彼女はレイモンドと一緒に居なければならないと言う。
その時、マッケイレブは、「もし何者かがグローリーの体の中にあるもののために彼女を殺したのなら、ある意味では、そいつはわたしのためにもグローリーを殺したんだ。もしそれが本当なら、我々にできるんだろうか?このまま・・・。」と問いかけると、グラシェラは下を向いて長い間、何も言わなかった。
ようやく、グラシェラは「あなたは何もしていない。」「あなたの言った意味は分かっているが、それでも神を信じて欲しい。」と言う。

ブリーフケースを持った男が公衆電話の前で立ち止まってふたりを見たので、グラシェラは駐車場に向かい、マッケイレブは、反対方向に向かった。
コメント
"〜in a way they killed her for me as well〜" とマッケイレブがグラシェラに言う言葉があるが、これは、ある意味では真実をついているということを、マッケイレブはまだ知らない。
思いがけない殺人の動機が明らかになり、今後またマッケイレブ自身が容疑者になったり、更に二転三転して思わぬ結末に繋がっていくことになる。
まぁ、こういうミステリーというのは、最後には一番犯人らしくない登場人物が犯人だった、ということが多いのだけど、どうなる・・・?
May 22, 2008
第31章 あらすじ
 フォックスはBOPRAの移植コーディネーターに電話をし、もっともらしい作り話でグロリアの臓器の移植先を教えてほしいと頼む。 異例な頼みをいぶかしく思うコーディネーターだったが、フォックスの巧みな説得が功を奏し移植された人物と主治医の名前を伝える。

 電話を切った後、フォックスは同僚をだましたことに落ち込み、マッケイレブに対し絶対に犯人を挙げることを約束させる。
コメント
29章では、グラシエラがイニシアティブを取りマッケイレブを引きつれ、勤務先の病院のPCから血液ラボのサイトに不正アクセスする、という危ない橋を渡ります。 担当者が席を外す15分間が勝負。 果たして時間内に情報を手に入れられるのか、まさに手に汗握る展開で、二人の緊張感が読んでいるこちらにも伝わってきまでした。 

30章では、マッケイレブの主治医であるフォックス女史とグラシエラが初めて顔を合わせ、マッケイレブの扱いを巡って火花を飛ばします。 あわや一触即発という場面でマッケイレブが割って入りましたが、もらった心臓を粗末にしているようにも見える事態にフォックスが怒り心頭なのは理解できるところです。

31章では曲がったことが大嫌いなフォックスがその禁を破り、同僚をだまして極秘情報を入手します。それだけマッケイレブの推理は説得力があったという証でしょう。 

マッケイレブも14章ではFBIを引退したことを隠して、画像処理会社に防犯ビデオの拡大を頼んでいましたが、FBIを離れた今、正攻法に頼っていては捜査の進展は望むべくもありません。 それでもグラシエラが白昼堂々マッケイレブに白衣を着せて自分の職場に乗り込んだことは少々意外でした。 同時に彼女の腹の座り具合が頼もしく、二人が見咎められることなく病院を出た時は、ほっと胸をなでおろすと共に痛快な気分になりました。
May 8, 2008
第29章 あらすじ
 マッケイレブとグラシエラは、グラシエラが看護師として働いているホーリークロス病院に到着。 非番ながら制服を着てきたので、誰にも見咎めることなく血液供給コーディネーターのデスクに直行する。 グラシエラはコーディネーターが昼食を買いに行く15分ほどの間に、BOPRA(血液臓器提供および要請機関)のサイトから必要な情報を引き出そうとしていた。 近くのデスクにいた顔見知りの看護師にはマッケイレブを医学生と紹介し、緊急治療室に運びこまれた患者のために至急BOPRAのサイトにアクセスする必要があると説明する。 グラシエラは無造作モニターに張ってあるアクセスコードでログインした後、献血者ファイルのAB型の欄にグロリア、コーデル、ケニヨンの名前を見つける。 3人ともCMV陰性であり臓器提供者であった。 マッケイレブは、リストのプリントアウトと、グロリアから臓器を提供された人物の特定を頼むが、途中で時間切れとなり病院を後にする。
第30章 あらすじ
 次に二人が向かったのは、マッケイレブの担当医フォックスのいるシーダーズ病院。 フォックスは初対面のグラシエラに対し、看護師でありながら体調が万全でないマッケイレブに捜査を頼んだことを非難する。 反論を試みようとするグラシエラを遮り、マッケイレブは自分自身がこの事件を調べることを選択したのだと話す。 そしていままでの経緯を伝え、グロリアの臓器の移植先の調査にフォックスの力を借りたいと頼む。 困惑しながらも真摯に話しを受け止めたフォックスは、二人の熱意を知り、手伝うことを約束する。
April 24, 2008
第27章 あらすじ
 マッケイレブとグラシエラは、彼女のフォルクスワーゲンで、グローリアが勤務していたLAタイムズ紙の印刷工場へ向かった。
今回バディには、運転ではなく、マッケイレブの船の周囲を潜水して異常がないかを調べることを頼んだ。昨夜の侵入者がウエットスーツを着て海から船にもぐりこんだと思われるためだ。
昨夜のマッケイレブの電話については、バディは夜中に電話は鳴らなかったと言う。マッケイレブはバディが気づかなかったのか、あるいは自分が間違った番号を押したのだろうかと思った。

 マッケイレブは、侵入事件の後、安全を期して資料一式を船に置かずバッグに入れて携帯し、いつもは引き出しに入れてある銃も持ち歩くことにした。

 グローリアの勤務先で上司のクリント・ネフに話を聞くが、彼女が優秀な従業員で同僚たちにも好かれていたという以外のことは何もわからなかった。
ネフがドナルド・ケニヨンとゴルフ仲間であったことがわかるが、これも事件に関係があるとは思えない。

 工場は印刷機が耳栓をしなければならないほどの騒音を出しており、そこら中インクのしみだらけで、社員達は皆、インクの汚れが目立たないような濃い色の制服を着ていた。マッケイレブがそれを見て思いついたのは、グローリアが殺害された時、勤務の帰りであったが私服だったこと。彼女はここで着替えてから帰ったわけなので、更衣室のロッカーに何か手がかりが残されているかもしれない。
 マッケイレブは自分でグローリアのロッカーを調べたかったが、女子更衣室のシャワーが使用中で遠慮せざるをえず、同僚で親しくしていたアネット・ステイプルトンという女性とグラシエラが、一緒にグローリアのロッカーを調べた。しかし特別なものは見当たらず、衣類のポケットにも何もないという。

 しかしマッケイレブは、待っている間に、更衣室のドアの横にはってある献血のポスターを見てひらめくものがあった。
彼はとまどうグラシエラを引っ張るようにして、急ぎ工場を後にする。
第28章 あらすじ
 グローリア・コーデル・ケニヨン。一見ばらばらに見えた各事件をつなぐものはblood――CMV陰性のAB型という珍しい血液型の血液だ、というひらめきは、更衣室の前のポスターを目にしたマッケイレブの中で確信となっていた。コーデルもケニヨンも、この血液型の持ち主であったに違いない。
犯人の狙いはまさにこの血液型にあった、そしてコーデルとケニヨンの時には、2人を殺害したものの、犯人の目的は達せられず、グローリアの死でようやく達せられたのだ。その目的とは・・・マッケイレブの心臓移植!

 自分自身が「被害者の死により恩恵を受けた者」となっていることを知ったマッケイレブは、保安官事務所にこの発見を伝える前に、自分で出来る限りの事実を明らかにしようと決心する。
マリーナに戻り、すぐにコーデルの妻に電話して、コーデルの血液型を聞こうとするが、彼女は留守だった。

 血液型という思いもしなかった原因に衝撃を受けるグラシエラは、一刻も早くその裏付けが欲しく、自分の勤務する病院へ行って、血液ラボのコンピューターで調べようと言い出す。
コメント
いよいよ、タイトルの"Blood"が最重要な手がかりとなって浮上しました。
しかし、それならば、犯人は誰なのか? ますます謎が深まります。
マッケイレブが侵入者に気づき、バディに電話したとき、なぜつながらなかったのか? 何か解決への手がかりが隠されているのか、それとも「目くらまし」でしょうか?

推理小説ファンのバディは、また新しい本を読んでいます(27章)
この"Hocus"という本は、Jan Burke という作家の「アイリーン・ケリー・シリーズ」、女性記者のアイリーンがいろいろな事件を解決する連作シリーズの一つで、4冊ほど邦訳が出ていますが、これはまだ翻訳されていないようです。
Amazonの「中身検索」でチラっと読んでみることができます。
http://www.amazon.co.jp/gp/reader/0743444531/ref=sib_dp_pt#reader-link

P.342に、"hocus pocus"というフレーズも出てきますが、hocusというのは「麻酔剤入りの飲み物」「酔っぱらった」などの意味で、"hocus pocus"は「呪文・いんちき・まやかし」或いはそのようなもので人をだます、というような事をあらわすそうです。
April 17, 2008
第26章 あらすじ
 デスクワークにへとへとになりながら、Ameliaから借りてきたメモとステイトメンツに取り掛かるころには一日も終わろうとしていた。銀行の出納記録からCordellは水曜日ごとに現金を引き出しているのが判明した。預かった3ヶ月間の出納記録からはCordellは給料の支払いごとに同じ銀行の支店のATMで現金を引き出していることがわかった。そして彼は結局その支店で殺されたのだった。
 Gloria Torresが夜ごとシャーマン・マーケットに立ち寄っていたようにCordellも殺されたとき、決まった行動パターンを取っていたことがわかり、発砲犯が被害者たちの行動を見張っていたという考えが一層確実なものとなってきた。

 書類と格闘している中、思いがけずGracielaの訪問を受ける。彼女は以前頼まれたGloriaの行動をしるした手帳を持参したのだった。それと、もうひとつ、泊まる準備をしてきており、McCalebとの関係を進展させようと決心していた。
 その夜二人は結ばれ、長年異常な環境の中で仕事をしてきたMcCalebにとって、彼女のぬくもりは人生をやり直すチャンスをもらったように感じるのだった。

 真夜中物音でMcCalebは目を覚ました。何者かが侵入してきたのだ。一瞬Bolotovを疑ったがすぐさま彼の感からそれはありえないと思い直した。McCalebに気づかれた侵入者は逃走した。その後姿を追った彼はできるだけ多く記憶にとどめようとした。赤い車、小型車、外国車、磨り減ったサスペンション・・・、どこかその車に見覚えがあった。

 再びボートに戻ったMcCalebはセキュリティを確認しながら敷物が濡れていることに気づいた。そしてドアのそばに立っていた侵入者の体をマリーナの明かりがどのように反射していたかを思い出していた。
コメント
 犯人はやはりCordell、Gloria両者を見張り、彼らを狙って殺害したことが確実になってきた。犯人に狙われた二人の共通点とはいったい何か。これからがいよいよこの本のクライマックスとなってゆくようだ。犯人と思われる侵入者もいよいよMcCalebの周囲に現れ始めた。彼がみた見覚えある車、いったいどこで目にしていたのだろうか・・・。点と点が線になっていくのがもう間もなくのような気がしてわくわくする。そして怖い気もする。これがサスペンスの醍醐味なのだろう。
March 13,27, 2008
第24章 あらすじ
 
 マッケイレブはアメリア・コーデルから事件前2ヶ月間の夫の出張の記憶のメモを受け取るとともに彼の書斎を調べさせてもらい、幾つかのメモを取り又幾つかの書類やクレジットカードの利用詳細など借用し持ち帰って調べる事とした。
コメント
 「沢山の細部を手にしているが、どれか肝心の細部が一つ分れば雪崩が起きて一切が氷解する」と言うマッケイレブの言葉が印象的だ。「あらすじ」で飛ばしてしまった細部が後でキーだったと分るかもしれない。 
第25章 あらすじ
カルターズからケニヨン事件の捜査の電話帳のような厚さの資料が届いていた。FBIとビバリーヒルズ警察の合同捜査では犯人はプロの殺し屋でマフィヤに関与しているようだ。殺し屋の雇い主はケニヨンが主張していた横領した金の殆どを取った蔭のパートナー説に傾いているようであった。隠しマイクに残っていた「カノーリを忘れるな」と言う犯人の最後の言葉をFBIの暗号解読部門で調べた結果、映画「ゴッドファーザー」で裏切り者を処刑しに出かけようとしている幹部に奥さんが「帰りにカノーリ(シチリヤ島のパイ菓子)を買って来るのを忘れないでね」と言うマフィヤのふてぶてしさをよく現わしている台詞だと分った。

ふいにマッケイレブはコーデル事件、トーレス事件で犯人がカメラに向かって何かを言った事を思い出し、その唇の動きが全く「カノーリを忘れるな」と一致することを確認し興奮とアドレナリンが体中に湧き上がるのを感じた。

FBIのケニヨン事件担当の2人がマッケイレブの船にやって来て盗んだファイルを返せと言って来たがそんなものは知らないとしらばくれて追い返した。
コメント
 「 ケニヨン、コーデル、トーレスの3つの事件が銃器が同一と言う事だけでなく犯人も同一であることが分ったが、これら3件の関連、更に犯人は全く分っていない。謎解きはいよいよ佳境に入る。
February 28, 2008
第23章 あらすじ
 コーデルのサバーバンから消えた写真のことをウィンストンに伝えた次の日、マッケイレブはウィンストンから月曜日8時に会議を開くので出席するように電話で言われていた。会議にはウィンストンと上司の警部、それに保安官事務所の刑事が数人、それにグロリア・トーレス事件担当刑事であるアランゴとウォルターズ。FBIのマギー・グリフィンも参加すると言う。グリフィンはFBIのロス支部凶悪犯罪者プログラムフ班でマッケイレブの後を継いだ女性。

 朝8時にマッケイレブがスターセンターに出向くと、迎えてくれたヒッチンズ警部が「あることが起こってこの捜査は我々だけで行うことにしたので手を引いて欲しい。君が確度の高い手がかりを与えてくれたことに感謝している」と伝える。しかもウィンストンがそのことで何度も電話で連絡をとったがつながらなかったと。マッケイレブはグラシエラとレイモンドを迎えるために電話と留守録装置をボートのキャビネットに閉まったままチェックをしていなかったのを後悔した。なぜ捜査からはずされたのか警部に問いただすが無駄だった。何かある。ウィンストンが彼に連絡が取れなかったとすればワシントンDCのヴァーノン・カルターズも取れなかったことになる。マッケイレブは不意にカルターズがドラッグファイア・プログラムで条痕が一致することを突きとめたに違いないと察した。

 捜査局の誰がこの会議に出席しているか確かめるため、ロックリッジの待つ駐車場に戻った彼はリアウィンドウにステッカーの貼ってある車を探しだした。バイザーに留めてあるガソリンカード番号からその人物がFBIロス支部の副支部長ギルバート・スペンサーだと知る。ロスのFBIで2番目の高位にいる人物を動かすようなことが自分の知らないところでおこっていることにショックを隠せない。

 ヴァーノンに電話をかけるとやはり、条痕検査の結果11月にドナルド・ケニヨンの頭部から掘り出した銃弾の破片とウィンストンが送った銃弾をレーザーで調べた結果が83%一致したことがわかった。そのことはケニヨン、コーデルそしてトーレスと三件の殺人事件で同じ銃が使われたことを意味する。「調査結果はすでに送ったので明日にも届くだろう。」とヴァーノンは言い、彼に気をつけるよう助言した。

 ワシントン・ギャランティ銀行の頭取だったケニヨンは、空融資や幽霊会社を通して3500万ドルを手に入れ逃走、銀行は倒産した。5年後コスタリカで発見されロスに連行、裁判で懲役48年の有罪判決を受けた。身辺整理のため60日の猶予期間を特別に与えられその期間中に、ビバリーヒルズの住居で侵入者によって射殺された。犯人はつかまっていない。この事件で彼を違法に監視していたことや自宅などに盗聴器を設置していたことが明らかになり世論が反発、FBIを窮地に追い込んだ。マッケイレブは新聞の一面を飾ったこの事件を思い返した。ちょうど病に倒れ自分も死ぬ覚悟をしていた時期と重なる。11月にケニヨンを殺した人物が 2ヵ月後と3ヵ月後にコーデルとトーレスを殺した人物なのか、マッケイレブは答えを見つけなければならない。
コメント
  マッケイレブとカルターズは知り合って12年、カルターズ夫妻と家族ぐるみの付き合いをしてきた。マッケイレブがヴァージニア州クウォンティコ時代のFBIの同僚でカルターズは今もワシントンDCの犯罪研究所のFATで働いている。二人はたびたび同じ事件を担当してきた。信頼しあっている男同士だからこその会話がすばらしい。
February 14, 2008
第22章 あらすじ
 昼食後、グラシエラはレイモンドをベッドで休ませた。 マッケイレブはグラシエラに、自分の心臓移植の記事が新聞に掲載された後、なぜすぐ訪ねてこなかったのかと質問する。 グラシエラは、自分は記事を見ていなかったが、妹の友人が電話を掛けてきて、マッケイレブが妹の心臓をもらった人物かもしれないと教えられたことを話す。

 次に彼女が、彼がFBI時代に担当した事件について尋ねた。 事件のファイルが入っている箱には、彼女が記事で見た名前が記されているものもある。 そのうちの1つ、殺人現場にコード(暗号)ともとれる数列を残す”コードキラー”は、権威に対してコンプレックスを抱き、権威を出し抜いて一泡吹かせることに快感を感じる連続殺人犯の一人であった。 いまだ野放しの犯人は、自分に対し個人的に怒りを感じているとマッケイレブは語った。

 夕食にはレイモンドが釣ったバラクーダをステーキにしたが、レイモンドもグラシエラも強い味が口に合わなかった。 レイモンドの就寝後、2人は飲み物を手に甲板に出る。 マッケイレブは捜査の話をしなければならないとわかっていたが、雰囲気を壊すのがためらわれ言い出せないでいると、グラシエラが船室に飾ってある女の子の写真について尋ねてきた。 彼はその子はオーブリー・リンといい、その存在を忘れないように飾ってあるとだけ言って口をつぐむ。

 寝付けないマッケイレブは起き上がり体温を計りに行く。 そこにグラシエラが現れる。見つめ合う2人は互いにゆっくりと近づき、ついにマッケイレブが彼女を抱き寄せる。 

 2人はグラシエラのベッドで愛を確かめ合おうするが、事が性急に進みすぎたことにためらいを感じたグラシエラが途中でストップをかける。 謝る彼女に、マッケイレブは「後で後悔するようなことをさせたくない」と素直に理解を示し、ベッドから降りようとする。

 グラシエラはマッケイレブを引きとめ、再び写真の女の子、オーブリー・リンのことを尋ねる。 彼女は未解決の一家惨殺事件の被害者で、捜査を担当したマッケイレブは、犯人から送られてきたビデオで残忍な手口を目の当たりにしていた。 死体から身元が割れそうなものがすべて奪われていたが、唯一見つかったのが女の子の握っていた十字架だった。 「きっと最後の時まで神に祈っていただろう」、そう語るマッケイレブは、犯人に対する激しい憤りと事件を解決できなかった無念さを思い起こし、この件が決して自分の心から消え去ることがないことを再確認する。 

翌朝、マッケイレブはグラシエラに、妹の日常の行動について書き出し、彼女の友達と上司に会う手はずを整えてくれるように頼む。 そして妹は単なる強盗事件の被害者ではなく、なんらかの理由で犠牲者として選ばれたと確信していることを伝える。
コメント
  今回の章は甘〜いラブシーンが中心かと思いきや、マッケイレブの心に深く刻まれている過去の殺人事件を語るというもう一つの山場がありました。 両方とも臨場感に富んだ描写で、音読するこちらまで少々息苦しくなるほどでした。 まさにこれぞ大人の小説!という感じです。 いままでマッケイレブとグラシエラは、ともに惹かれあい徐々その距離を縮めていきましたが、この章ではマッケイレブがグラシエラの頼みに応え、常に心にのしかかってきた凄惨な過去の事件を打ち明けます。 話を聴いた彼女は涙を浮かべ、つらい思いを抱えてきた彼の心中を察し、深い同情を寄せます(I’m sorry you have that to carry around.)。 その言葉を聞いた彼は、「もう君も同じだ、かわいそうに」(And now you have it. I’m sorry, too.)と彼女のことを思いやります。 こうして同じ痛みを分け合うことで、2人の精神的な絆は確かなものとなりました。 
それにしてもグラシエラにメロメロながらも紳士的に余裕を見せるマッケイレブ、いつもハートは熱いけれど頭は常にクールで思いやりも忘れない、私の中のマッケイレブ株がまた一つ上がりました。
第21章 あらすじ
 土曜日の朝、マッケイレブはベッドのシーツ類を全て洗濯できるよう、7時前に起き、ボートの掃除をし、来客を迎える用意を整えたが、目の前の家事に集中できないことに気がついた。

 昨晩砂漠から戻って、ジェイ・ウィンストンに、コーデルの車から消えた写真のことを電話で伝えると、ウィンストンはマッケイレブがあらたな手がかりをつかんだかもしれないと渋々認め、一時間後、電話をかけなおしてきて、月曜日の午前8時にスターセンターで、会議を開くことになったと伝えてきた。
 ウィンストンと上司の警部、保安官事務所の刑事が数人とアランゴとウォルターズ、それにロス市警のVICAPでマッケイレブの後任となったマギー・グリフィンも参加すると言う。
 スターセンターの会議の出席者の大半は、マッケイレブの言うことを信用していないので、月曜の朝、マッケイレブは苦しい立場に立たされ、厳しい詮索の的になるだろう。
 マッケイレブはそのことが気がかりで、会議の準備をするために二人の訪問を断るべきか迷っていたが、結局断らなかった。彼は、グラシェラと話す必要があるという以上に、たんに彼女と一緒にいたいと思っている自分に気付いて、やましさを覚えた。

 洗濯と掃除の後、マリーナセンターで夕食の材料を買い、釣具店で釣りの生き餌とレイモンドへのプレゼントとして、小型の釣竿とリールのセットを買った。
 ボートの準備が整うと、バディ・ロックリッジのボートに歩いて行き、月曜の朝、都合がつくか尋ねた。バディは、送って行けると答えると、スターセンターで何があるのか、興味を示す。マッケイレブは、彼にボロトフがやってこないか、気をつけて見張っていて欲しいと頼んだ。
 振り返るとグラシェラとレイモンドがやって来て、スタンデッキに立ち、レイモンドをボートに乗せようとしていた。

 ボートに戻り、二人と挨拶を交わす。マッケイレブは、グラシェラが持っていた買い物袋を受け取り、ボートの中を案内た。
 ヘッドに体温表がかけられているのに気付いたグラシェラは、マッケイレブの体調を気遣う。自分が生き続けることがどれほど大切なことかに気付くのだった。
 レイモンドにプレゼントした釣竿とリールを喜ぶレイモンドを見て、この少年はこれまで大人の男がそばにいたことがあったのかと、悲しい思いで考え込む。

 その後、マッケイレブは、とっておきのポイントに案内し、釣りを始める準備をした。
 マッケイレブは、グラシェラに父がカタリナ島に来て、そこに届まったいきさつを語った。父の病気が重くなって、病院で最後を迎えさせたことを、後悔していた。グラシェラは、善意のせいでくよくよ悩んでも仕方が無いと言う。

 レイモンドの様子を見ると、釣り糸に反応があった。少年は、自分が釣ったことに興奮し、マッケイレブは、説明した釣糸の手繰り方を思い出させ、作業の大半を行ないながら、協力して糸を巻き取って行く。魚が疲れ、戦いが終わろうとしていることを感じたマッケイレブは、レイモンドに釣糸を託した。磨きあげられた金属のように陽を浴びて輝いていたのは、鋭い歯を持つ、バラクーダだった。
コメント
 この章では、楽しい休日を過ごしながらも、母一人子一人で育ったレイモンドの境遇を思いやるマッケイレブと、妹の心臓を移植されて新たな生命を得たマッケイレブに対するグラシェラとの三人の心のひだが織り成す感情が表現されている。

 また、マッケイレブがバディのボートを訪問した時の件で、他人のボートを訪問した時には、外で声をかけドックで待つという、マリーナの慣習があるということが分かる。この慣習を知らないグラシェラとレイモンドが始めて、マッケイレブのボートを訪問したときに、声をかけないで、ボートに乗り込んで来たという場面があった(11章)。今回も気がつくと、グラシェラはボートに自分で乗り込み、レイモンドを引き上げようとしているところだった。
 マッケイレブは、ボートの微妙な上下を感知し、それが近くを船が通りかかったのか、誰かがボートに乗り込んで来たものかが分かるようになるとあったが、このように、ボートで暮らしている者には、特有の感覚(勘)が備わり、また陸には無いようなルールがあるようだ。

 ところで、レイモンドが釣ったバラクーダは、非常に歯が鋭い魚で、熱帯と温帯の海に分布するカマス科の硬骨魚で全長1.5mになるものもあるそうだ。
  ”おにかます”=ウィキペディア
January 24, 2008
第20章 あらすじ
 マッケイレブは、例によってバディ・ロックリッジに運転させ、ロサンゼルス郡北東部のランカスターに向かっていた。
ATMで殺害された被害者ジェームズ・コーデルの自宅の調査のためである。
 コーデルの家も含め、その地域には、立派な家が立ち並んでいたが、マッケイレブは、どんな素晴らしい家でも、海から遠い所では、自分は住めないと思った。

 マッケイレブは、コーデルの家の車寄せに、ビデオで見た白い Chevy Suburban があるのを確認してから、一緒に家の中に入りたそうなバディに車で待つように言い、コーデルの妻アメリアから、居間で話を聞く。

 まずアメリアにグローリアの写真を見せて、心当たりを聞くが、全く見覚えはないという。
 マッケイレブは、コーデルの事件が、一般の強盗事件とは少し違うように思われることを伝え、いろいろな質問をするが、コーデルの妻からは、何も手がかりは得られなかった。
 コーデルは仕事熱心な導水管の技師で、仕事以外の時間は家族と過ごしており、殺されなければならないような理由は考えられない。
 最後にマッケイレブは、コーデルの持ち物で何か紛失しているものはないかを聞くが、衣類やジュエリーは何もなくなっていないと妻は言った。

 さらに Chevy Suburban の中も調べていると、退屈したバディがやって来て、マッケイレブの制止を聞かずにのぞきこみ、ダッシュボードを指差す。
 「あそこだけ、ほこりのついてない所がある。写真か何かが置いてあったんじゃないか。」
 マッケイレブがバディの位置に立ってみると、光線の加減で見えなかったものに気づいた。計器盤のカバーの上に、そこだけほこりのついていない四角いスペースだ。
 しかし、この車は、コーデルがもっぱら仕事用に自分だけで使っていたもので、妻はこの車の中に何があったかをほとんど覚えていなかった。

 マッケイレブは、コーデルの仕事の上司で、彼の車に同乗したことのある女性に電話をかけ、確かにその場所には、コーデルの妻と娘たちの写真が置いてあったという証言を得る。
 ここに来てようやく、犯人は、犯行の「記念品」をそのつど現場から持ち去っていることが明らかとなった。グローリアのイヤリングとコーデルの家族写真。

 マッケイレブは、抽象的だった「邪悪」が、次第に、血と肉を持った憎むべき犯人像として人間の姿になってくるのを感じ、犯人に対する言い知れぬ怒りを覚えると同時に、追い詰める対象が具現化してくることに恐ろしいような喜びを感じるのだった。
コメント
  マッケイレブとバディがコーデルの家に向かう途中にVasquez Rocks 自然公園を通りますが、↓このような所らしいです。
http://ponderosascenery.homestead.com/vasquez.html

 推理小説のファンで、マッケイレブの捜査に首をつっこみたくてしかたのないバディと、あくまでも運転手役だけをやってほしいマッケイレブとのやりとりが笑いを誘いますが、今回はバディの大手柄で、「使えるヤツ」として大いにイメージアップ。八五郎バディのファンとしては嬉しい限りです。しかし、今後これで自信過剰になって、ますますマッケイレブの邪魔をするようになるのではないかとちょっと心配ですが・・・

 夫が自分たちの写真を車に置いていたことを妻は知らず、車に乗った女性上司が写真に興味を持って見たので覚えている所など非常にきめ細かく納得のいく展開です。大河ドラマとかならともかく、映画では、こういう細かいところは、どうしても省略になってしまうのは残念ですね。
January 10, 2008
第19章 あらすじ
 保安官事務所の殺人課にJaye Winstone を訪ねたMcCalebは、Gloria Torres事件について新事実を告げた。これまで単なる物取りの犯行であると見ていたこの事件は、まったく違った様相を見せ始めた。
 McCalebは知り合いの映像技術者にGloria が殺されたときの映像を拡大してもらった。

 Gloriaの左の耳たぶには留め金付の三日月、フープイヤリング、そしてぶら下がった十字架が映っていた。そして右側には対の三日月をしていた。しかし、病院に運び込まれた際に記入された遺留品報告書には十字架のイヤリングの記載がなかった。McCalebは犯人が奪ったと主張する。Winstoneは異常者を扱った経験が浅かったせいもあり、にわかには信じがたい。
”なぜ犯人が持ち去ったと断言できるのか?”
”何のために持ち去ったのか?”
”撃たれたときに外れたのではないか?”
”良きサマリア人の存在は?”etc・・・。次々と疑問をぶつけるWinstoneにMcCalebは丁寧に返答する。彼には彼女を納得させる自身があった。McCalebは続ける、犯人は偶然に居合わせた人間を襲ったのではない。初めからGloria とわかって襲った。彼女を一定期間内見張り、習慣を学び、計画を周到に練った。そして彼女を思い出すよすがに記念品を奪ったのだと。

 今回の犯人はpower killer modelに該当するという。power killer modelとは、自分の抱えている問題、例えば仕事、自尊心、女性一般、特に自分の母親のことなどを警察や捜査官に転化させる。彼らの鼻を明かすことで自尊心の昂揚を得る。権威をあざ笑い、社会を震撼させることがやつ等のやり方というのだ。更に今回新たな特徴が加わっている。犯人はカメラを意識し、自分の仕事振りや成し遂げたことを見せて認められたい。そのことで危険は増幅するが、却ってそのことが犯人のパワーと化する。カメラに向かい、カメラの向こうの捜査官にウィンクし、話しかけ、興奮するのだという。

 では、James Codellが盗まれたものは何か。McCalebはCodellにとって第2の家のようなものだったトラックの調査を望む。何が盗まれたかが判れば二人が生贄に選ばれた理由がわかるかもしれなかったからだ。

 Winstoneは催眠術とBolotovの大失敗のあとで既に意見の衝突をしている上司にMcCalebの新説を持っていくのはご免こうむりたいと思っている。それを感じ取ったMcCalebは独自に捜査を進めていこうと決心する。その強い意志にWinstoneも”Okay, you gaot it.”と告げた。
コメント
 買い物に行ったコンビニで強盗にあい、命を落としたという不幸な事件から一転、実はGloria、Codellともに狙われていたという衝撃的な事実。個人的な問題から鬱積したものを、他者を傷つけることで悦びを感じるといった捻じ曲がった感情。誠に人間業ではない。捜査官のWinstoneも理解しがたかったことを素人の私など到底想像することも難しい。人間の深い、深い闇のその先に邪悪などというものが存在するのだろうか。
 いよいよ犯人は誰なのか。”被害者の皮膚に自分の名前を刻み付けるあからさまな犯人”ではないのなら、日常生活を何食わぬ顔をして、他人には結構”いい人”で通っていたりするのかもしれない。もうこの話の中に出てきているのだろうか・・・。
December 13, 2007
第18章 あらすじ
 マッケイレブは催眠術による事情聴取に失敗し、又殺人事件の調査から手を引かなければ主治医を降りると宣言され怏怏として、グロリア・トーレスの事件の報告書、ビデオ・テープをじっくり見直しているうちに、重要な見落しに気が付いた。

 グロリアが撃たれた時のコンビニの記録ビデオでは左耳に3個、右耳に1個計4個のイアリングをしているのに、病院ではずされた所持品記録では3個しかなく、左耳にあったぶらさがり式の十字架のイアリングが無くなっている。それはグロリアのお気に入りで毎日付けていたと言う。

 マッケイレブは姉のグラシエラとグロリアを搬送した救助隊にもこの確認を取り、この発見の重要さに身震いした。
コメント
 マッケイレブは長い間FBIで連続殺人犯に係わった経験から、彼らは必ず被害者から何か特別の記念品を取って行く事を知っており、ATMの事件もコンビニの事件も金銭目的の強盗事件ではなく連続殺人犯に狙いを付けられたものではないかとひらめいたようだ。普通の人には分らない事だがその道の専門家にはあることかもしれない。今後の発展に期待する。
November 22, 2007
第17章 あらすじ
 ヌーンの閉じたまぶたの下の眼球がすばやく動いている。彼が深いトランス状態に入った証拠だ。マッケイレブは質問を開始した。ヌーンの頭の中には、駐車場から出てくる車を見た時点まで映像をまき戻し、スローモーションの映像が見える。車は誇りまみれのグランドチェロキー、4ドア・モデル。ナンバープレートは犯人がTシャツでバンパーを覆っていて見えない。運転手の顔の映像をズームインしてもらい、特徴を聞き出す。白人であることはわかるが帽子を目深にかぶっているのではっきりしない。帽子は野球帽でチームのロゴがはっきり見えるというので、メモ用紙を渡し、描いてもらった。大きなCを垂直の線が貫いている。その模様は楕円で囲まれていた。マッケイレブは運転手の顔を見てくれと頼んだ。右の耳にイヤリングをしていないこと、さらに耳の下から首に刺青がないことがわかり、これで発砲犯がボロトフではないことがはっきりした。なんら犯人の手がかりとなるものを聞き出すことができず、走り去っていく車のナンバーもフロントと同じくカバーで覆われて確認できなかった。マッケイレブは失望の色を隠せない。

 思いどおりの成果が得られずくたくたに疲れたマッケイレブに憮然とした顔のヒッチンズ警部が声をかける。野球帽のロゴのデザインと車の特徴がはっきりした以外何も得るものがなかっただけでなく、容疑者候補ボロトフの線も消えたと答えるしかなかった。そんな彼に催眠セッションをやったことは価値があったと、やさしく慰めるウインストン。もしヒッチンズ警部が今日のことで嫌味を言ったら自分のせいにしてくれとマッケイレブは言って保安官事務所を後にする。表に出ると案の定、アランゴ刑事が待ち構えていた。車の中でウイスキーを飲んだらしい酒臭い息をして絡んできた。アランゴはマッケイレブに「自分の担当している事件だからこれ以上手を出すな」と迫る。マッケイレブは「自分がこの事件に深くかかわることになったのは殺されたグロリアトーレスの心臓を移植されたからで、なんとしても犯人を見つける覚悟だ」と言い残しマリーナに戻る。 
コメント
 催眠セッションが実際の犯罪捜査にどのように使われるかが判り興味深かった。催眠にかかった人が事件当日の様子をスローモーションで細部まで再現していくことができることに驚いた。

マッケイレブがアランゴに「I got her heart. I’m alive because she’s dead. And that cuts me into this in a big way.」と打ち明けるせりふがすごい迫力だ。マッケイレブは未だ術後の静養中の身でありながら命の危険を承知で犯人に立ち向かわざるを得ない立場に自分を追い込んでいく。 
November 8, 2007
第16章 あらすじ
 多くの警察官とFBI捜査官を含む無知な人間にとって、催眠術捜査は科学的根拠を持たない呪術的なものとしてとらえられていた。
 ヌーンに催眠術をかけて事情聴取することにウィンストンが同意したときは、驚いた。これまで捜査に進展が見られないため、催眠術の使用を検討されたが、80年代初頭にカリフォルニア州最高裁が、催眠術によって記憶を呼び覚まされた者は、刑事事件の裁判で証言できないと定めて以来、それによって得られる証言が、裁判の証人として使えなくなるという懸念を上回るかどうかをはかりにかけなくてはならなくなったということから、コーデル事件でも、催眠術を使うことが検討されたが、唯一の証人を失うことを嫌がって、棚上げになっていた。
 二つ目は、最高裁の決定以降保安官事務所では、刑事たちに催眠術の訓練をしなくなり、催眠術をかけられる者はいなくなったため、外部の者に依頼しなくてはならなくなるので、躊躇せざるを得なかった。マッケイレブが、10年以にわたってFBIの事件で催眠術を使用していて、喜んで協力すると伝えた時、その提案に飛びつき、ウィンストンは催眠術をかけることを承認させた。

 マッケイレブは、保安官事務所の殺人課に着いたとき、ロックリッジに、しばらく時間がかかるので、夕食を食べに行くことを勧めた。仮眠をして、熱も下がったマッケイレブは、ウィンストンに出迎えられ、ボロトフを指名手配したことを伝えられた。

 狭いオフィスには、アランゴとウォルターズ、アル・ヒッチンズ警部とダナ・デクルートという画家が待っていた。
ヒッチンズが指差した部屋の隅のカートの上に載っているモニターには、別室に座っている一人の男が映っていた。ビデオテープに映っていた人物だと分かった。マッケイレブは、ボロトフを含めた、6枚組の写真を用意してくれたかどうかウィンストンに確かめた。アランゴは、わざと喧嘩腰で、マッケイレブを挑発するようなことを言うが、ヒッチンズに仲裁され、ウィンストンと共に部屋を出た。

 ヌーンが待つ部屋のドアの前で、ウィンストンは、確認しておきたいことはないかと尋ねた。マッケイレブは、催眠術にかかっている間は、被験者と話をするのは自分だけで、何か伝える必要が生じたら、メモを書くか、合図をしてドアの外で話をすることにしたいと言った。ウィンストンが、ドアを開けると、ヌーンが顔を上げた。マッケイレブを元FBIの捜査官で催眠術をかけると紹介した。二人は、握手し、マッケイレブは、ヌーンをリラックスさせようと話しかけ、部屋を見回した。そして、ウィンストンに座り心地の良い椅子とハサミを欲しいと言い、ウィンストンは出て行った。ミラーグラスの反対側にビデオカメラが設置されているのを知っているので、ヌーンをそれに向かい合う位置に座らせなくてはならなかった。天井の蛍光灯を外し、ヌーンに手渡しながら、ヌーンをリラックスさせるために雑談を交わす。4本のうち3本を外し、部屋をほの暗くした。

 ウィンストンが警部の椅子を持って戻ってきた。マッケイレブは、ウィンストンから受取ったハサミを置いたテーブルを鏡に向かって押しやり、警部の椅子を鏡に向かい合う位置に置き、カメラの視界を遮らないように椅子二脚を置いた。ヌーンに警部の椅子を示し、ウィンストンとマッケイレブは残りの二脚に座った。

 ヌーンにこれからやろうとしていることに関して質問が無いか尋ね、簡単に催眠状態について説明した。筋肉エクササイズをしばらく続けたあと、力を抜くように言った。ヌーンは、眼鏡をはずして、ポケットにしまった。マッケイレブが様子を見ると、ヌーンは眼球を上に向け、催眠術にかかりやすい兆候を示していた。

 マッケイレブは、できるだけリラックスして、1月22日の夜の事件を思い出すように言った。ヌーンは、ランカスターのATMで起こった事件の終わりごろに出会ったことを話し、事件以降何度も行なわれた事情聴取の内容と変わりが無く、特に新しい内容も付け加えられなく、マッケイレブは、このコンピュータ・プログラマーの隠れている記憶が同じように鋭いかもしれないという希望を抱いた。
ウィンストンが、6枚組の写真を手渡した。ヌーンは、眼鏡をかけてファイルを開け、写真を見たが、この中には居ないと言う。マッケイレブは、否定的なコメントだと解釈しないよう、それは構わないので、続けようと言い、ファイルをテーブルに軽く放った。

 マッケイレブは、ヌーンがリラックスする時に何をするか尋ねた。ヌーンはビーチに行くことだと答えた。「砂はとても白くて、広い。馬を借りることができ、がけ下にある水ぎわの砂浜を馬に乗って進む。海面ががけ下に切りこんでいて、ちょうど張り出しのようになっている。その下の日陰に座るんだ。」
マッケイレブは、目を瞑って、ひざに手を置き、心のなかにその場所を思い浮かべ、そのビーチを歩いている自分を想像するように言った。マッケイレブは、30秒ほど黙り、ヌーンのつむった目の隈周辺の皮膚がゆるみはじめたのを確認すると、一連の感覚感知エクササイズの後、筋肉エクササイズをつま先からすべての筋肉群を動かした。これは筋肉を疲労させる方法で、リラクゼーションと休息の支持に対する心のしたがいやすさを増す効果があった。

 ヌーンの呼吸が深くなっていることに気づいたマッケイレブは、時刻を確認し、ジェームズに目を開けないで、両手を広げ、顔の前まで持ってくるように言う。
腕を揚げたままにさせて、リラックスするように、散歩しているビーチのことを考え続けるようにと語りかけた。ヌーンは、マッケイレブの指示に従い、催眠術にかかった兆候を示している。
 しばらく待ってから、マッケイレブは、ヌーンにTV受像機がある、と伝えた。そして、ヌーンが持っているリモコンは、特別なリモコン付きで、自分が望むものを何でも見ることができ、映像を一時停止したり、早送りや巻き戻しも自由にできると言う。そして、そのTVで見ようとしているのは、お金を引き出そうとしてランカスターの銀行に行った1月21日の夜に目にしたものだと言う。
 マッケイレブの「TVをつけてくれ」という言葉に、ジェイムズは、返事をしたが、この30分ほどの間で始めて彼が口にした言葉だった。
 「あの夜に戻るとしよう。ジェイムズ。君が見たものをわれわれに教えてくれ。」  
コメント
 16〜17章では、ランカスターのATMで起こったジェームズ・コーデル事件の目撃者に、催眠術をかけて事情聴取する様子が詳しく語られている。16章では、マッケイレブが実際に催眠状態に入る前に、部屋の環境を細かく整えたり、ヌーンに指示する筋肉エクササイズの様子が具体的に描写されていて、毎回のことだが、あらすじのどこを省略して良いか迷い、苦労した。
 アメリカでは、80年代以降は少なくなったと書いてはいるが、捜査に催眠術を利用することも多いのだろうか。超能力を持つFBI捜査官が透視して事件を解決するTV番組があるが、一見非科学的に思えるようなことでも、実際に成果が上がるとなれば、取り入れているのだろうか。
October 25, 2007
第15章 あらすじ
 ToliverとBolotovの再聴取のためDeltona Clocksを訪れたMacCaleb。
 屈強な Bolotov相手に何が起こるかわからないと、銃の装備を入念にチェックする。ショップの中は安物の時計が何点か飾られているだけで客は一人もおらず、閑散としていた。受付の若い女性にArnold Toliverに合いたいと告げると
勝手にMacCalebを警察関係者と勘違いして取りつぐ。

 事件当日、Bolotovは工場で働いていたというアリバイがあった。その証拠にタイムカードが押されていたのだった。聴取をした二人の刑事が疑いもしなかったことをMacCalebは容赦しない。Bolotovの代わりに誰かがタイムカードを押すことができるのではないかと執拗に迫るのだった。するとArnold はその夜、すでに帰宅しており息子のRandyが工場を閉めたことを白状 した。

 そしていよいよBolotovが現れた。背が高くがっしりとした、両方の二の腕には蜘蛛と蛇の刺青がされてあった。ならず者の風貌に、心臓に爆弾を抱えるMacCalebは内心動揺するが核心へと迫っていく。’Sherman Marketで二人を殺したのはお前だろう’と及んだところで、’お前こそ誰なんだ?警察官ではないな?’と切替される。そして、殴りかかったBolotovに運転免許証をとられ正体がばれてしまう。’そして、いつかお前に復讐してやる’と捨て台詞を吐いてBolotovは逃げ去ってしまった。

 ふらふらになりながら車に戻ったMacCalebは公衆電話からTerryに電話する。今晩James Nooneの催眠捜査を実行すること、そしてBolotovは臑に何がしかの傷を持つがこの事件には無関係の可能性が高いということを告げたのだった。
 電話を終えて車に戻ると熱っぽい。感染症に罹っているのではと不安がよぎる。Bonnie Foxに連絡したいがすれば入院生活になってしまう。Noonの催眠捜査が唯一の手がかりとなった今、それを逃すわけにはいかない。MacCalebはボートに戻ってそのために少し仮眠をとることにした。
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 Toliverがロシア人は文句も言わす良く働く、と言うがアジア系ではなくロシア人も労働賃金が安く雇えるのだろうか。
先日、テレビのドキュメンタリー番組でもドイツで季節労働者として働くロシア人を取り上げていた。ロシア人が働き者だとはあまり聞いたことがなかった私は以外だった。新聞広告で募集したと言うが、Bolotovはもしかすると不法労働者だったのかもしれない。Toliverの隠蔽もそれを証明するのではないだろうか。それにしても初動捜査のミスとも言うべき、二人の刑事の適当な捜査には閉口してしまう。
October 11, 2007
第14章 あらすじ
 マッケイレブはグロリアが殺害された様子が映っている防犯ビデオを持って、ハリウッドのビデオ・グラフィックス・コンサルタント(VGC)社を訪れる。 VGC社は、撮影機材、編集スタジオのレンタル業務の他に、ハリウッド随一の画像処理のラボを持ち、マッケイレブはその技術力を借りて、グロリアに続いて殺された韓国人店主の腕時計が示す正確な犯行時刻を知ろうとしていた。

FBIの在職時、マッケイレブはVGC社にビデオを持ち込んで連続銀行強盗事件の重要な手がかりを得たことがあった。 犯人逮捕後にマッケイレブの名前入りの感謝状を贈られた職員が、今回も快く協力を申し出てくれた。

早速編集装置でビデオの該当個所を増幅するが、粒子が粗くて文字盤が読めない。 「もう少し時間が欲しい」と職員がダビング用のテープを取りに行っている間、マッケイレブは撃たれた直後のグロリアのクローズアップを見て、新たな事実に気付く。 彼女の左耳には三日月のピアス、小さな輪っかのイヤリング、十字架のイヤリングの3つがあったが、右耳には三日月のピアスひとつだけだった。

マッケイレブは、今回もFBIの協力をしているという職員の思い込みをあえて正さず、ボートの電話番号を連絡先として渡した。
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 現在マッケイレブの運転手をしているロックリッジは、普段は定職を持たず半端仕事で生計を立てています。 第8章で初めて登場したときには、”wharf rat”( 波止場をうろついている人 翻訳では「波止場ゴロ」)、“aging surfer”(年寄りのサーファー)、”beach bum”(できる限り海岸で時間を過ごす人)とさんざんな紹介でした。 彼は推理小説の大ファンで、待ち時間も本を手放しません。 この章では、前回話題になった松本清張の「砂の器」はすでに読み終え、次の本” Death of a Tenor Man“(ビル・ムーディー著 1995)http://www.billmoodyjazz.com/books.html を読み始めています。
 調べてみるとこの作品は邦訳がなく、ジャズピアニストが探偵役を務めるシリーズ物の一作でした。 またオフィシャルHPを見ると、著者本人もバークリー音楽院卒で、プロのジャズドラマーとして活躍中のようです。

 ロックリッジは犯罪小説の良さをこう語ります。
“It’s a much different world. Everything is ordered, good and bad clearly defined, the bad guy always gets what he deserves, the hero shines, no loose ends. It’s a refreshing antidote to the real world.”
(現実とはだいぶ違う世界だ。 すべてに秩序があり、善悪がはっきりしている。 悪者は常に相応な罰を受け、ヒーローは光り輝き、未解決事項はない。 現実世界に対するスカッとした解毒剤さ。)
 それに対してマッケイレブは一言、”Sounds boring.”(つまらなそうだ)。 いかにもハードボイルドな答えですが、ロックリッジの応答 ”No, it’s reassuring.”(いや、心強いよ)もエンターテイメントの真髄を言い当てた小気味のよい切り返しです。 

 それにしても作中人物にこの手の問答をさせるところに、著者の遊び心と「自分はリアルな筋立てでboringではない上質なエンターテイメントを提供してみせる」という自負が垣間見えるような気がしました。 
第13章 あらすじ
 木曜日の朝、マッケイレブは、グラシエラやレイモンドと過ごした前夜の興奮が残っている事を感じつつ、早々と朝食をすませて、2か所に電話をかける。
まずは、ワシントンにいるFBI時代の同僚で、火器凶器分析の専門家ヴァーノン・カルザース。
カルザースと彼の妻マリーは、マッケイレブと前妻ケイトが家族ぐるみで長年親しく付き合ってきた、公私ともに信頼できる親友だったが、マッケイレブが手術後の新生活を始めてからは、連絡をとるのはこれが初めてだ。
久闊を喜びマッケイレブの今の生活を気遣うカルザースに、マッケイレブは、グローリア・トーレス事件について、自分の心臓移植との関わりも含めて詳しく伝え、犯行に使われた銃弾のレーザープロファイリングを依頼する。自身も幼い息子を白血病で亡くし、人一倍被害者に対する思い入れのあるカルザースは、依頼を受け入れる。

 続いての電話で、保安官事務所に出勤してきたばかりのジェイ・ウィンストンをつかまえる。
先日、捜査書類を一山渡したばかりだというのに・・・といぶかる彼女に、マッケイレブは、準備したリストを元に、次々と質問をして行く。ミハエル・ボロトフのアリバイ、地理的交差照合、コーデル事件の銀行カード、黒いチェロキーをすぐに報道発表しなかったこと、等々。
黒いチェロキーについては、後から発表はされたのだが、その時は事件はすでに旧聞となっており、反応が得られなかったので、失敗だったとウィンストンは認める。頃合良しと見たマッケイレブは、銃の話に持っていき、そちらも捜査が壁に突き当たっていることを聞き出すと、証拠品として保安官事務所に保管されている銃弾をFBIに送り、レーザープロファイリングにかけて、弾道データベースで調べることを提案する。
銃弾の調査ならこちらでも行ったが何も出て来なかったし、LA市警との関係もあるしと、最初はしぶっていたウィンストンだったが、結局彼の提案を受け入れ、FBIのカルザース宛に銃弾を送る手はずを整えるという。
密かに凱歌をあげたマッケイレブは、さらに、目撃者のジェイムズ・ヌーンに対する催眠捜査も提言する。
コメント
 この章は、マッケイレブが電話で話すだけの、映像的には全く動きの少ない場面ですが、内容的には非常に緊迫感があります。
 すでに捜査官の身分を退き、一般市民にすぎないマッケイレブが、捜査に介入している事に対し、カルザースもウィンストンも、最初はとまどいを隠せないのですが、結局は2人とも彼の提案を受け入れることになるのは、FBI時代のマッケイレブの仕事ぶりと人となりをよく知っている2人だったからだと思われます。
それぞれ、マッケイレブに向かって次のように言っています。
<Carruthers> You and your feelings. I remember those.
<Winston> You don't miss a thing, do you?
現在の日本でもそうだと思いますが、いろいろな専門家のもとで、細かく細分化されている警察の捜査・・・しかし科学的な捜査技術はいくら進んでも、それを活用して解決まで持っていくのは、やはり、全体を見通し、粘り強く努力する、人間の頭脳と熱意に他ならないのだということを、マッケイレブの言動は教えてくれますね。
それにしても、米国では催眠術も捜査の一環となっている(「催眠科学捜査協会」というようなものもあるらしい)とは驚きでした。カルザースに送られた銃弾の調査の結果と共に、本当に催眠捜査が行われるのか、それによって何か新しい証言が得られるのかどうかも期待されます。
September 27, 2007
第12章 あらすじ
 グラシエラはマッケイレブにレイモンドを紹介した。レイモンドは亡くなったグロリアの一人息子で今はグラシエラが面倒をみていた。
 ボートで食事をする予定を変更しマッケイレブは二人をレストランに誘った。マッケイレブは出かける支度をする間、レイモンドに釣りの用意をしてやり子供の時自分が父親からされたのと同じように手を取って教えてやる。レイモンドは目を輝かして甲板から糸を垂らした。
 
 それからグラシエラをボートの中に誘い、ワインを勧める。マッケイレブは、FBIの同僚である女性と10年前に結婚し3年で離婚。その後も一緒に働いていたが、父親の病気を機に自分は転居してきたのだと言った。一方グラシエラも結婚に失敗、子供はいなかった。
 マッケイレブは今朝ロサンゼルス保安官事務所に行きウィンストン刑事に会い関連するふたつの事件に関する資料をすべて渡されたことを告げる。一日かけて調書を読み,気づいた点を彼は最善を尽くし要約し彼女に説明する。そしてこの事件の捜査が十分徹底的に行われたこと、 そして大きなミスは見当たらなかったと言った。彼女は落胆したが、彼は「自分はまだあきらめていない、刑事の捜査も続いている」と励ました。

 レストランで食事を終えた三人はボートに戻る。帰り道で彼は一つの手がかりとしてミハイル・ボロトフと言う人物が浮かび上がったことを告げ自分がその男性と会って話を聞いてみるつもりであること、FBIで銃弾の条痕比較をさせること、グロリア・トーレス事件の目撃者にも当たってみたいと言った。
 
 グラシエラは妹のグロリアが自分より優秀で将来は新聞記者になる夢を持っていたことやすばらしいボランティア精神を持っていたと告げる。そして「私が変わっていればよかった」と今にも泣き出しそうになる。マッケイレブは彼女の肩に腕を回して慰める。車に乗り込む前、今度はグラシエラが彼の頬にキスした。
コメント
 マッケイレブの過去が浮かび上がってきた。前の奥さんてどんな人だったのだろう。つい想像してしまう。マッケイレブはグラシエラに会うたびに引かれていく自分に気づいた。
September 13, 2007
第11章 あらすじ
 マッケイレブは昼寝から起きすっきりしてグローリア、トーレス事件の検討に入った。目撃者が一人しか居なかったコーデルの事件と異なり、トーレスの事件には色々な関係者が居て多くの時間の指標があるのに刑事たちはそれを一つの時刻対比表にまとめて検討するのが抜けているのに気が付いた。

 1時間かけて様々な時間の指標を抜き出して重ねあわせて時刻対比表を書き上げた所はっきりした矛盾を含んでいる事が浮かび上がった。
 まず事件があった時間にシャーマン、マーケットを車で通り過ぎたエレン、タイフは車中のラジオのニュースが丁度始まった10時40分頃2発の銃声を聞いたのに911に電話したのは10時43分だった。その時には911は既に事件を知っていた。何故すぐ電話しなかったのかを直接電話して確認した所、すぐに電話をしたが911の電話がみんな話中で待たされていた事が分った。

 次にコンビニ店の防犯ビデオの時刻表示によればグローリア、トーレスが撃たれたのは午後10時41分37秒だのに彼女を助けようとした良きサマリア人からは30秒前の10時41分3秒に911に通報されている。この矛盾をロス警察のウォルターズに質した所、ビデオの時計が進んでいたせいだと言う。その上その後暴風で停電があったので防犯ビデオの時計は今更調べようが無いと言う。トーレスと一緒に撃たれた店主の腕時計を思い出しビデオで何とか見ようと努力したが駄目だった。

 この未解決の件を如何しようかと葛藤している時グラシエラ、リヴァースが少年をつれてボートにやって来た。調査に熱中して夕食に呼んだのをすっかり忘れていた。
コメント
 現場には出ずに警察の調査資料をVICAP(凶悪犯罪逮捕プログラム)等を使っていろいろな面から検討するプロファイラー(分析官)なる専門家が居るのが興味深い。日本でも似たような検討はするんだろうがアメリカの方がずっと分科しているのだろう。
August 23, 2007
第10章 あらすじ
 ボートに戻ったマッケイレブは、サロンで資料を調べ始めた。
彼は、資料を時系列順に並べることにした。最初に、コーデルの事件が来る。

 FBIに勤めていた頃の手順は、机の上をきれいに片付けてから、書類一式を机に並べることだった。
 マッケイレブは、事件の書類一式とビデオテープから、実際に現場に行かなくても、実際に捜査しているのと同じように引き付けられ、嫌悪やスリルを感じることができた。
彼は資料を読み始めて、今、そのスリルを感じていた。

 マッケイレブは、ジェイムズ・コーデル事件の捜査報告書を読み、犯罪現場のビデオテープを見て、ジェイムズの家族や仕事、そして事件当日の模様を再現していく。
ビデオテープには、犯行現場の様々な捜査段階が映されており、目撃者と保安官補の会話が映されていた。

 マッケイレブは、テープを見て、犯人が乗っていたと思われる車種(黒いチェロキー)のことが報道期間に発表されなかったことに注意を払う。

 犯行現場の証拠リストには、銃の静止画像のコピーがあり、条痕比較報告により、凶器が特定されていた。
 ジェイ・ウィンストンが取り寄せた、銃の盗難リストには、過去2年間で5件の盗難事件があったが、そこに記載された名前や住所にはピンとくるものは無かった。

 次に、去年1年間にロサンジェルス・カウンティで発生した黒のチェロキー盗難事件の報告書があり、マッケイレブは、ウィンストンがトーレス事件と関連付けたと考えた。

 発砲による脳の損傷で、コーデルは数分以内に死亡したことは、はっきりしているので、解剖報告書は重要ではなかった。

 ウィンストンの「スリーストライク説」を扱った報告書によると、地理的に2件の強盗発砲事件の発生地に近い二つの保釈事務所に登録されている重罪犯は71名だった。
71名のうち、行方不明になっているのは、7名だった。残りの8名は、主に体格がビデオに映っている犯人と違うという理由から、残りの90パーセントはアリバイがあるという理由で、シロと判定された。

 残りの報告書は、目撃者のヌーンの追加尋問記録ふたつと、犯行現場のスケッチ、黒いチェロキーを運転している男の職務質問報告書だった。
 最後の書類は、捜査が壁に突き当たっているという、ウィンストンによってまとめられた捜査概況書だった。

  コーデル事件の報告書の中に、ウィンストンの説を地理的に交差照合した資料が無いことに気が着いた彼はバディに地図帳を借り、資料の中の項目にを地図帳に記入して行った。
 作業に一時間ほど掛かったが、終わる頃には、71名のリストの中のひとつの名前が地理的に関連があるものとして、浮かびあがってきた。
 その男の名前は、ミハエル・ボロトフという、30歳のロシア系移民だった。
 ボロトフは、職場で事情聴取を受けていたが、タイムカードがアリバイとなり、それ以上の追及は受けなかった。

 ここまでの作業で大部消耗したマッケイレブは、昼寝をすることにした。
コメント
第10章では、マッケイレブがウィンストンから渡された資料から、グロリア・トーレスの事件の前に起こった強盗事件について詳しく語られている。そして、一人の容疑者が浮かび上がってくる。
とはいえ、その容疑者と目されるミハエル・ボロトフは、ウィンストンらの捜査では、特に怪しいところは無かったとされている。しかし、マッケイレブは、現役のFBI捜査官だったころのやり方で事件の分析をし、関連した一連の出来事を地図上にマークして行き、ボロトフが二つの事件現場の近くに住み、事件で使われたのと同じ型の拳銃の盗難事件が起こった家から、4ブロックの所で働いていたのだ。

ここで、重要な容疑者が登場したが、果たしてマッケイレブの推察は正しいのかどうか、気になるところだ。
先はまだ長いので、一気に事件解決とは、ストレートに進むはずはないが、このボロトフにどんな伏線が隠されているのだろうか?

この物語の始めに、マッケイレブはFBIのprofiler(分析官)だったことが書かれているが、この章では、彼のprofilerとしての仕事のやり方を髣髴とさせるような場面になっている。

P97に、
 He did his best work at the desk. As a field agent, he was average at best.
とあるが、マッケイレブは現場で実際に捜査に当たるときは、平均的だったが、デスクワークではより一層その分析力を発揮したようだ。

しかし、FBIを退職した今は、ウィンストンからは多少の協力は得られても、殆ど手がかりが無い状態で自分で動かなくてはならない状況で、どのように事件解決へ立ち向かっていくというのだろうか。
何れにしても、この先、ハラハラドキドキさせられそうである。
August 9, 2007
第9章 あらすじ
 5年前の夏、ロスの北 バスケスロックスで乱暴され扼殺された女性の遺体が見つかった。 事件の主任捜査官であったジェイ・ウィンストン刑事はFBIのVICAP(凶悪犯罪者逮捕プログラム)に協力を求め、初めてマッケイレブと出会った。 

 マッケイレブは1年前にも近郊で同様の事件が起こっていることに目をつけ、2つの事件が同一犯の手によるものと推察。 その上で、事件の間隔が11か月と長いこと、犯行の後、わざわざ遺体に服を着せているという2点から、犯人の心理的葛藤を読み取った。 自分の殺人衝動をなだめるため、犯人は遺体の遺棄場所か墓に現れるとふんだマッケイレブは、両方の犠牲者が同じ霊園に埋葬されていると知り、張り込みを命じた。

 予想通りに犯人とおぼしき男が現れ、尾行を始める。 そして3週間のち、男が女性を車に押し込もうとしたところを逮捕した。 この件でジェイ・ウィンストン警部は、マッケイレブに大きな借りできたと感じていた。

 マッケイレブは、バディの運転する車で保安官事務所に行き、ウィンストン刑事から資料のコピーをもらう。 ウィンストンは「スリーストライク法」がこの手の殺人事件を増やしていると分析する。 3回、重罪の判決を受けると自動的に恩赦なしの終身刑が確定するというこの法が、以前ならただの強盗で終わっていたものが、目撃者の殺害を多数引き起こしているという。 それをふまえて、彼女は、前科2犯以上の拳銃強盗犯を洗っている最中だった。
コメント
この作品には3つの法執行機関が出てきます。 マッケイレブが勤務していたFBI(連邦捜査局)、ジェイ・ウィンストン刑事がいる保安官事務所、アランゴとウォルター両刑事のロスアンゼルス市警の3つです。 FBIとロス市警はともかく、保安官事務所って?と最初は疑問に思いました。 調べてみると、これは、伝統的に地方分権が発達しているアメリカならではの所産でした。

FBIはご存知のように、州を越える、または複数の州に渡る犯罪や扱う国家的な組織です。 保安官事務所とロスアンゼルス市警は、それぞれロスアンゼルス郡とロスアンゼルス市という自治体が運営している独立した法執行機関でした。 ロスアンゼルスがあるカリフォルニア州には、州警察もあります。 

つまり、カリフォルニア州には、カリフォルニア州警察(CHP)、ロスアンゼルス郡保安官事務所[郡警察と訳す場合もある](LASD)、ロスアンゼルス市警察(LAPD)と3つの組織があるのです。 他にも全米には、ハイウェイパトロール、州兵や国境警備隊など2万近い法執行機関があるということです。 日本に比べるとかなり複雑ですね。
July 26, 2007
第8章 あらすじ
 翌朝、10時間以上睡眠をとった後、いつもの朝の健康チェックを終えたマッケイレブは同じマリーナの「ダブルダウン(倍賭け号)」というボートの住人、バディ・ロックリッジとそれぞれの船上から、港のコンテナ荷上げ騒音の不満などの会話をかわす。
 バディと知り合ったのは1年ほど前。今は港の騒音に文句を言っているバディだが、彼自身、真夜中にハーモニカを吹いてマッケイレブの目をさまさせ、それが二人の知り合うきっかけになったのだ。
 マッケイレブの入院中、The Following Sea号の面倒を見てくれたのもバディで、今も、彼に買い物などを手伝ってもらう代わり、時々マッケイレブのキャビンに食事に招いたりする間柄だ。

 ウィティアの保安官事務所に電話し、ジェイ・ウィンストンと会う約束をしたマッケイレブは、手術後まだ運転を禁じられている自分に代わって、今後の捜査の足を提供して貰えないかとバディに頼む。犯罪小説の大ファンでマッケイレブの元の仕事に興味津々のバディは大喜びで乗ってくるがマッケイレブは、あくまでも、パートナーではなくドライバーの役割だけだと釘をさす。
コメント
第8章は、7ページと非常に短い章ですが、また新しい人物の登場です。
マッケイレブの隣人、「波止場ゴロ ( wharf rat )」のバディ。銭形平次に配するガラっ八の八五郎、水戸黄門に配するうっかり八兵衛、素浪人月影兵庫に配する焼津の半次、みたいなキャラになるんでしょうか?(どうして全部時代劇なんだ・・・?)

定職もないサーファーのバディ、日ねもすビーチでぶらぶらしながら
"low-cost, low-maintenance life" を送っているとp.78にありますがこの、low-maintenance という言葉、もともとは「世話をするのにあまり手のかからない」「メンテしやすい」というような意味でしたが、映画「恋人たちの予感」(1989)の中で、ビリー・クリスタルが、女性の形容として使ったのが大ヒットし、現在は英辞郎でも、
   low-maintenance:自己主張の弱い、おとなしい
と説明があります。
(逆に、high-maintenance は「自己主張の強い、わがままな、世話の焼ける」)
デート相手のメンテ(?)に神経を使う男性たちの琴線に触れた表現だったのでしょうかね(笑)

ALPHAの皆様の自己評価としては、low-maintenance? それともhigh-maintenance?
ちなみに、ビリー・クリスタルは、相手役のメグ・ライアンに向かって
「君は最悪のタイプさ。自分では low-maintenance だと思っているが、実は high-maintenance というやつだ」と言っています。
彼の評価によれば、low-maintenance な女性は、「カサブランカ」のイングリッド・バーグマンだそうです。

(∀)

第7章 あらすじ
 これまでの経過を伝えるため、マッケイレブはグラシエラに会うことにした。

 タクシーで彼女の勤める病院に向かう途中ヴァレー地区を通りすぎた。いくつもの殺人事件の調査書類や写真やビデオテープを通してだがよく知っている場所だ。殺人鬼コ−ドキラーが4人を殺した後、姿をくらました所である。

 病院のカフェテリアでグラシエラは新聞記事で知ったマッケイレブのボートの名前についてたずねた。なぜFollowing Sea ではなく The Following Sea なのかと。

 The following seaの意味が追い波で、もっとも注意をしなくてはいけない波のことである事、そしてマッケイレブは父親からいつも背後に注意しろと常に言われて育ち、警告の意味で父親がボートにつけた事を打ち明けた。

 彼は明日の朝保安官事務所に行く予定を伝え、今後の調査のため、亡くなった妹のグロリア・ト−レスについてどんな些細なことでもいいから教えて欲しいと頼んだ。グラシエラはそのためには妹の息子のレイモンドに会って欲しいと言い、明日3人で会う約束をした。

 ボートに戻り、寝付かれないまま彼はノートの新しいページに明日ジェイ・ウィンストン刑事に会ったら聞きたいことを二つメモした。

 一つはグロリア・トーレス事件とジェイムズ・コーデル事件がどれほど強い結びつきがあるのかどうか。二つ目はジェイムズ・コーデルが奪われた300ドルが被害者から直接奪われたものかATMの現金支払いトレイから奪われたのかという点だった。 
コメント
髪を束ねて看護婦の白い制服を着たグラシエラと会ったマッケイレブは彼女に惹かれるものを感じる。彼女の表情にはある種の哀しさがありそれをマッケイレブはどうにかして癒したいと思う。

これから捜査の成り行きとともに二人の関係も気になるところだ。  

(A.I)

July 12, 2007
第6章 あらすじ
 マッケイレブはロス市警のアランゴ刑事の非協力的な態度に憤慨したが致し方なくタクシーで犯行現場のコンビニを見に来た。ステッカーが窓を覆っていて外から店内が見えないと言うこと以外これと言った特徴の無い平凡なコンビニで、たいした金も奪えるとは思えないのにどうしてここで犯行が行われたのか腑に落ちなかった。

 犯行についてもっと知りたいと思い、マッケイレブが新しい心臓で新しい門出をしたとインタビュー記事を書いてくれたタイムズ社の記者ケイシャ・ラッセルに電話をして、インターネットで過去1年半の間に「強盗」と「スキー帽」というキーワードで引っかかる事件を探して貰った所6件がヒットした。、その中にマッケイレブに協力してくれそうな保安官事務所のジェイ・ウインストン刑事と言う名前を発見し調査を進める手がかりを得た。

 アランゴ刑事に頼んでおいた調書を見せてもらう件はマッケイレブが命令系統、筋道を通さずにアプローチしたから見せられないと上司のバスカーク警部補が言っていると言う返事を聞き遂に堪忍袋の緒を切って「今度会う時にはお前の探している犯人を俺が捕まえて目の前に連れて行ってやる」と言って電話を切った。
コメント
「強盗」と「スキー帽」というキーワードで関連情報を探すことが出てくるが、この種の調査は本当に便利になったものだ。又アメリカでは日本よりずっとちゃんと入力されていると思う。
茅ヶ崎のラリー・キングの記事で名前のスペルが分からなかったのでアメリカ・ヤフーにラリー・キングと中東和平と入れたら1955年に3人の中東のビッグネームとインタビユーした記事がちゃんと出てきた。彼の詳細な経歴も勿論一杯出てきた。スペルを間違えて入れてもあなたの探しているのは何々ではないですかと正しいスペルを教えてくれて探してくれる。
昔なら図書館にでも行って昔の新聞を丹念に探さねばならない、それでも外国のことは出来そうにないと思うと今昔の感である。

(K.O.)

第5章 あらすじ
 マッケイレブは、アランゴとウォルターズと共に監視カメラのビデオを見た。

 ビデオには、小さなコンビニ店内の犯行の一部始終が映し出されていた。時刻表示は22:41:39だった。
 スキー帽で顔を隠し、黒っぽいつなぎを着た男は、右手でグロリアの右肩をつかみ、左手で彼女のこめかみにあてた銃の引き金を、躊躇することなく引いた。それを見て、マッケイレブは胸をぎゅっとつかまれる感覚を味わった。
 犯人は、キャッシュレジスターから金を奪い、薬きょうを拾うと姿を消した。

 マッケイレブが、あまりの暴力の激しさに、呆然と画面を見ていると、アランゴは、「お気に入りのアメリカンホームドラマでは決して見られないシーンだ。」と茶化すのだった。

 ビデオには、まだ続きがあった。犯人が立ち去った直後、「善きサマリア人」とも言うべき、メキシコ人と思われる男がやってきた。時刻は、22:42:55だった。彼はグロリアを助けようとした後、911通報した。
 この男は犯人の車のナンバーや何か手がかりになるものを目撃している可能性があるが、不法滞在を咎められ、国外退去になることを恐れてか、警察の呼びかけにも名乗り出て来なかった。彼が残した情報は、「トラックのような黒い車」と言うことだけだった。

 再びビデオを見た後、アランゴの挑発的な言葉によって、マッケイレブは、犯行の特徴から、犯人は始めての犯行ではなく、この近くに住む物か、おそらく事前に下見をして店内に監視カメラがあることを知っていた、と述べた。

 アランゴは、そんなことはもう分かっているとばかりに、にたにたと笑った。
 マッケイレブが近隣で起きた他の強盗事件について聞き出そうとすると、アランゴは「これ以上は、警部補に話さなければ、何も言えない。」と言った。
 マッケイレブは、抵抗してさらに情報を得ようとしても、今後のためにならないと考え、アランゴからの連絡を待つことにした。
コメント
ビデオには『右手でグロリアの肩をつかみ、左手で銃の引き金を引いた』とあるが、これは、犯人は左利きと思われる重要な手がかりではないだろうか?この章ではまだマッケイレブも多くを語らず、二人の警察官も、重要視しているようには見えないが、後々これが重要な意味を持ってくるのか、今後の展開が楽しみだ。

「善きサマリア人」
聖書にあるイエスの例え話(ルカによる福音書)の一つである。追いはぎに襲われた旅人をユダヤ人から迫害を受けていたサマリア人が救ったという。ここでは、死に瀕しているグロリアを助けようとしたことと、恐らくは、不法滞在者ということで警察の目を逃れるようにして暮らしている境遇もサマリア人になぞらえているかもしれない。欧米では、キリスト教の教えがバックボーンにあることが多いので、このように聖書の中の例え話や、地名、人名などが会話の中によく登場するようだ。
  サマリア人:ウィキペディア

(AKI)

June 28, 2007
第4章 あらすじ
 かつてFBIの分析官としてロスアンゼルス市警察(LAPD)と共に働いていたマッケイレブは、両者の間にある被害者無視のつまらない縄張り争いを熟知していた。 また、そのことでグロリア・トーレスの捜査がスムーズにいかないことも十分予測していた。 まして今のマッケイレブは、FBIのバッジも持たず私立探偵のライセンスもない。 彼はドーナッツの箱を片手にウェスト・バレー署に向かう。

正規の手順を踏むため、トーレス事件の指揮官バスカーク警部補に面会を求めるが、留守だった。 しかたなく担当刑事のアランゴとウォルターズに直接会うことにする。

署内にもかかわらず銃を腰にぶら下げたアランゴは、マッチョを気取ったかなりエゴの強いタイプであることが一目瞭然だった。 一方、ウォルターズのほうは、マッケイレブと同タイプであるように見えた。

マッケイレブの想像通り、アランゴは、進展のないトーレス事件に首を突っ込まれることに強い抵抗を示す。 しかし、マッケイレブの粘り強い説得により、殺人の様子が映っているビデオテープを見せてもらうことになる。
コメント
アメリカの警察物のドラマを見ると、よく警官がドーナッツを食べているシーンを目にします。 いかつい姿で砂糖やチョコレートがかかったドーナッツをパクついている様子はなんともミスマッチで面白いですが、ここでも登場しました。 46歳の元FBIが地元警察を訪ねる手みやげがドーナッツ! 男3人が顔をつき合わせ黙々と食べるシーンも出てきます。 ちなみに主人公のマッケイレブが選んだのはシナモン・シュガーでした。 このドーナッツは Winchell's (P44 3行目) http://www.winchells.com/ のもの、HPを見ると美味しそうな写真がトップページを飾っていました。  

(☆)

June 7, 28, 2007
第3章 あらすじ
 マッケイレブは、住居にしているボートで夜の海を見ながら思いにふけっていた。
 健康であった頃は、船尾に腰かけ一日の終りを一杯のビールと一服の煙草でリラックスして過ごすのが楽しみだったが、心臓移植手術を受けた今は、煙草は永久にアルコールも当分は厳禁だ。

 一日の締めくくりは、洗面所で体温を測り記録すること。鏡に向かえば、手術の傷跡の他にも、診断のたびに各種の検査でつけられる小さな傷跡でいっぱいになってしまった自分の身体がいやおうなしに目に入る。手術の後、自分の人生が今までと全く違うものになってしまったことに、まだ自分の中で折り合いをつけきれていないマッケイレブだった。

 マッケイレブは、グラシエラが彼を訪ねて来るきっかけとなった、自分へのインタビュー記事を取り出す。
 記事を書いたケイシャ・ラッセルというLAタイムズの女性記者は、マッケイレブのFBI時代にいろいろ協力してもらったことがあり、彼女のインタビュー依頼を断りきれなかったのだ。「元FBI捜査官の新しい心臓と新出発」と題したその記事には、有能な捜査官であったマッケイレブが職場で心臓発作を起こし心臓移植が必要になったこと、希少な血液型のためになかなか適合する心臓が見つからなかったがようやく移植手術が成功したこと等の経緯が詳しく記されていた。

 記事と記事に添えられたFBII時代の自分の写真を見て、マッケイレブは、自分が常に犯罪者に対する強い憤りを持ち、犯罪者に自分の罪をつぐなわせずにはおかないという信念で任務にあたっていたこと、グラシエラの妹の理不尽な死によって今の自分の生があることに思いを巡らす。自分に移植された心臓が、事故ではなく犯罪事件の被害者のものであったという事実は、彼に衝撃と共に負い目を感じさせていた。

 ついにマッケイレブは受話器を取り上げ、グラシエラに、翌日警察に行って状況を聞くだけは聞いてみるが、多くを期待しないでほしいと伝える。「大丈夫、貴方の中にある彼女の心臓が貴方を導いてくれる」というグラシエラの言葉がマッケイレブの心に残る。
コメント
◇K.O.さんも書いておられるように、表題の "Blood Work" にはいろいろな意味が盛り込まれているようですが、p.31にその意味の一つとして
Blood debts had to be paid in blood. That was why in the bureau's serial
killer unit the agents called what they did "blood work."
とあるのが、この物語の key sentences の一つかなと思いました。

◇マッケイレブがFBI時代に自分の関わった事件のファイルを退職の時にコピーして保管しておいたのが、とくに何か具体的な目的のためというよりは、
... he just liked the idea of having the files as a physical accounting or
proof of what he had done with that part of his life.
というのが、何となく納得です。

◇第3章では、p.26と章の最後(p.34)に、a photo of a young girl with braces,
smiling at the camera
について書かれているのが、ちょっと意味深?という感じです。この少女の名前、誰であるかは、まだ明かされていません。マッケイレブの家族?それとも事件関係者? 事件関係者とすれば、グラシエラの妹の事件とは関わりがあるのかないのか? 今後の展開が楽しみです。

(∀)

May 24, June 7, 2007
第2章 あらすじ
 マッケイレブは主治医のボニー・フォックスから心臓移植8週間後の検査結果で、何も問題がないことを告げられる。
 二人は単なる患者と主治医以上の信頼関係で結ばれている。
 マッケイレブは、臓器移植についての違和感とやましさにも似た気持ちを感じていることをボニーに打ち明ける。

 マッケイレブは、主治医ボニー・フォックスに、「自分の心臓は、2か月も経っているのに捕まっていない犯人に殺された者からの提供であること、先週の日曜日のタイムズ紙のコラムでのマッケイレブがまれな血液型で臓器移植を受けることができたという記事をきっかけに、臓器提供者の姉がマッケイレブを探しに来た」ことを話す。
 フォックスは、驚き、マッケイレブがその女性の役に立ちたいと思っていることを察するのだが、無理だと主治医として反対する。
コメント
 マッケイレブ、なかなか繊細な神経の持ち主のようです。

(☆)


 マッケイレブの体調からいえば、心臓移植からまだ60日しか経過していないのだが、精神的には正義感が甦ってきた彼にはもう2か月も経っているのにと対照的である。
 どんなに主治医がノーと言っても
    ”I'm the benefactor of an act of evil.”(悪の恩恵を受けてしまった)
という一言に彼の強い決断が感じられる。  

(Teddy

May 24, 2007
第1章 あらすじ
 元FBI捜査官テリー・マッケイレブは心筋症を患い早期退職を余儀なくされ、長らく待ってようやく心臓移植を受け、退院してロスアンジェルスのガブリリョ・マリーナのボートに住んでリハビリに専念している。

 そんなある日グラシエラ・リヴァーズなる美人が彼を探し訪ねて来て妹を殺した男を探してくれと言う。彼は今はFBIを引退しており、何よりも心臓移植後のリハビリ中で彼女の依頼は受けられるはずもなく何とか断るべく努めたがグラシエラ・リヴァァーズは全く諦めず驚くべき言葉を口にした。

「あなたの心臓は殺された私の妹のものだったの」
コメント
 マイクル・コナリーは1990年代を代表するハードボイルド作家で特にこの「ブラッド・ワーク」は1998年のアンソニー賞、マカヴィティ賞、フランス推理小説大賞の三賞に輝いたとの事である。
 所で "Blood Work"と言う表題が古沢嘉通の訳では「わが心臓の痛み」とされているが本の中では"Blood Work"は悪殺人犯を追う「血の任務」また普通の「血液検査」と言う意味でも使われている。表題の意味が納得出来る時を楽しみに読んでゆきたい。

(K.O.)

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